表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/112

謎の声《ロゼッタ side》

 生贄という運命を受け入れた次の日。

突如出現したドラゴンの討伐が終わり、王都に平和が戻った。

と言っても、疫病の蔓延や植物の枯死は相変わらずだが……でも、目先の脅威を取り除いた成果は大きい。


 また、聖騎士団の活躍により、教会の支持率も少しだけ上がっていた。

まあ、その代わり王家への不信感は増大してしまったが……。

今回、王家は王国騎士団をドラゴンの討伐に向かわせたが、あまり活躍できなかったため、ほぼ無能扱いされていた。

と言うのも、王国騎士団の団員達は聖騎士団に比べて、実力も経験も劣っているから。


 フィオーレ王国は元聖女メイヴィスの誕生により、他国の侵略が止まったため、武力を疎かにしがちだった。

『どうせ、戦争もないんだから』と物資や人員を割きまくり、騎士団の士気は下がる一方……そのうち、訓練をサボる者も多くなり、騎士達の腕は一気に衰えた。

しかも、実力のある騎士はみな近衛騎士団へ引き抜かれたため、質の悪い戦士しか王国騎士団に残らなかったのだ。

そんな状態で、未知の生物であるドラゴンを倒せと言う方がおかしい話である。


「まあ、何はともあれ、民の不満は王家へ向けられた。例の作戦を決行するには、絶好のタイミングね……」


 祈りの間で一人そう呟く私は、死期の訪れを悟る。


 上層部の人間は生贄(封印)の儀式と題して、街の広場で処刑を行うつもりだ。

教会内でコソコソ殺すより、インパクトがあるし、『本当に聖女は死んだのか?』と疑いの目を向けられることもないから。

殺される身としては、複雑な気分だけどね……。死ぬ瞬間を見せ物にされる訳だから。


「はぁ……私の人生、一体どこで間違えたのかしら?」


「────メイヴィス様を妬むようになってから、じゃないですか?」


 全く聞き覚えのない声に正論を叩き込まれ、私はビクッと肩を揺らした。


 ここには今、私しか居ない筈……なのに、どうして人の声が……!?もしかして、暗殺者!?


「あ、貴方は誰なの!?姿を現して!それとも、姿を現すのが怖いの?」


 周囲をいくら見回しても、声の主は見つからず……焦って、相手を挑発すれば────祭壇が輝いた。

直視出来ないほどの強い光を前に、私は思わず目を瞑る。


 い、一体何が起こっているの……!?やっぱり、相手は暗殺者……!?でも、こんな派手なことをする暗殺なんて、居るのかしら……!?


 様々な疑問を脳裏に思い浮かべる中、強い光がピタッと止まった。

私は好奇心に押されるまま、恐る恐る目を開ける。

そして────目の前に広がる光景に、ハッと息を呑んだ。


「な、何で……?どうして……!?伝説上の生き物に過ぎない貴方がここに居るの!?」


 ワナワナと震え上がる私は、祭壇を椅子代わりに使う人物に驚愕する。

黄金に輝く髪、茶色がかった美しい瞳、誰もが羨む端正な顔立ち……そして────背中に生えた真っ白な翼。


 嘘っ……!!有り得ない……!!どうして、ここに────天使(・・)が……!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ