運命の選択《ロゼッタ side》
教皇聖下の考えた筋書きは、こうだ。
偽聖女メイヴィスは正義の鉄槌を下した我々を逆恨みし、怨念を力に変えて魔女となった。
そして、メイヴィスは怨念の力を使って私達に攻撃している。
それを聖女ロゼッタ────つまり、私が命をかけて封印する。
教会側としては、封印が成功しようと失敗しようと、どうでもいいんでしょう。
聖女ロゼッタが命を懸けて、封印しようとした……という事実さえ、あればいいから。
仮に失敗したとしても、『魔女メイヴィスの力は聖女様より、強力だった』と言えば、済む話だ。
そうすれば、民達は邪悪な魔女に勇敢に立ち向かった聖女として、私を讃えるだろう。
根本的な解決は無理でも、民の信頼を取り戻すことは出来た。
「……つまり、私に生贄になれという事ですか?」
「生贄?ははっ!せめて、名誉ある死だと言ってくれ」
────『言い方を変えたところでやることは同じでしょう』という言葉を何とか飲み込む。
もはや表情を取り繕う余裕もない私は、ギロリと聖下を睨みつけた。
それでも、教皇聖下は楽しそうに笑っている。
「よく考えてみろ、聖女ロゼッタ。本物の聖女を死に追いやった悪女として死ぬより、魔女に立ち向かった勇敢な聖女として死ぬ方がそなたも良いだろう?それとも、そなたは稀代の悪女として、最期を迎えたいのか?」
「……他に道はないのですか?」
「残念ながら、ない。そなたを生かす道も一応、考えてみたが……その場合、多くの問題が発生する。民の心を一つにすることは、難しいだろう」
「そう、ですか……」
生き残る道はないと宣言され、私はそっと目を伏せた。
本当はずっと前から、分かっていた……生き残る道がないことに。
でも、その事実を認めたくなくて……必死に足掻き続けた。それがどんなに惨めなことであろうとも……。
でも、それも今日で終わり。
密かに覚悟を決めた私は、教皇聖下の目を真っ直ぐに見つめる。
「分かりました────この命、民のために捧げましょう」
生贄という運命を受け入れた私は、聖女として華々しく散ることを選んだ。




