教皇聖下の思惑《ロゼッタ side》
────それから、急いで教会本部へ戻った私は、教皇聖下と顔を合わせていた。
国王と同等か、それ以上の発言力を持つ教皇聖下は重苦しい表情で、こちらを見つめる。
点数稼ぎのため、直ぐに負傷した者達の世話に駆り出されるかと思いきや……これは一体……?もしかして、私は……とんでもない間違いを犯したんじゃ……?
「聖女ロゼッタ」
「は、はい……」
疑念を膨らませる私は、教皇聖下の呼び掛けにビクッとしながらも、きちんと返事する。そして、恐る恐る顔を上げた。
なんだか、凄く嫌な予感がする……。
「聖女ロゼッタよ、今まで教会のため……そして、民のため尽力してくれたこと感謝する」
「い、いえ!聖女として、当然のことをしたまでですわ!」
「ほう?聖女として当然のこと、か……」
社交辞令として口にした言葉に、聖下はピクッと反応を示した────かと思えば、クツクツと楽しそうに笑う。
「そうか。では、教会の……いや、民のために最後まで聖女の務めを果たしてくれるな?聖女ロゼッタ」
ニヤリと口元を歪める教皇聖下は、何か良からぬことを考えているようだった。
でも、ここで『いいえ』と断る権利など、私にはない。
「……はい。私は聖女として、最後まで民の心に寄り添い、己の務めを果たしたいと思っています」
「くくくっ。よくぞ、言ってくれた!聖女ロゼッタ!献身的に民に尽くす姿勢は、まさに人間の鑑だ!」
バッと両手を広げ、大袈裟に褒めちぎる教皇聖下は真っ直ぐにこちらを見据えた。
「さあ、聖女ロゼッタ!今こそ、そなたの務めを果たすときだ!魔女メイヴィスの悪しき魂を封じ込めるため、己の魂を天に捧げるのだ!」
「!?」
声高らかにそう言い放った教皇聖下に、私は言葉を失う。
────と同時に、教会側の思惑に気づいてしまった。
なるほど……教会側はあくまでも、間違いを認めないつもりね。