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心が壊れた人々《ロゼッタ side》

 凄まじい落下音と共に窓ガラスは割れ、建物がギシギシと悲鳴をあげる。

建物の揺れに耐えきれず、私はバランスを崩して尻餅をついた。


 今の落下音は何……?外で何が起きているの!?まさか、また異常現象が巻き起こったんじゃ……!?


 私は建物の揺れが収まるのと同時に立ち上がり、ガラスの破片が飛び散る窓辺へと向かう。

逸る気持ちを抑え、ゆっくりと窓の外に視線を向けた。

すると、そこには────存在しない筈の生物が居た。


 全身を覆う鱗、トカゲのような顔と体、背中に生えた翼に鋭い牙……間違いない、あれはドラゴンだ。


「何で架空上の生物であるドラゴンが王都に……!?」


 先程の落下音と破壊された街の様子から、あれが幻術だとは考えにくい……。だって、幻術は所詮まぼろしで実体がないから……。

なのに、あのドラゴンはきちんと質量を持っている。


 っ……!!お願い!!悪い夢なら、早く覚めて!


 神にも祈る気持ちで、私はギュッと手を握り締めた。

だが、そんな事をしたところで現実は変わらない。


「お、おい!あれって、ドラゴンじゃないか!?」


「何でドラゴンがこんなところに……!?伝説上の生き物じゃなかったの!?」


「謎の疫病に家族を殺されただけでも辛いのに、ドラゴンなんて……もう無理よ!耐えられない!」


 疫病の患者から、ドラゴンへ意識を向けた平民達はみんな泣き崩れた。

そして、『もう嫌だ』『我慢の限界よ』と口々に叫ぶ。

平民達の精神的ダメージは、もう限界に達していた。


「もう嫌!!何でこんな目に遭わないといけないの!?」


「やっぱり、メイヴィス様の祟りよ!!メイヴィス様は、きっと私達を恨んでいるんだわ!」


「俺は最初から聖女交代に反対だったんだ!なのに教会と王家が断行してっ……!」


「何が新聖女ロゼッタだ!クソくらえ!この疫病神が!!」


「こうなったのも、全部アンタのせいよ!」


 誰かのせいにしなくては精神を保てないのか、平民達は私に食って掛かってきた。

血走った目には狂気が宿っており、殺意にも似た感情を発している。


 精神的に弱ってしまった人間は、攻撃的になりやすい。

的となる人間を探し、全部そいつのせいにすることによって、精神の安定を測る。

そして、その的となる人間こそが……私だ。

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