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月の門《トリスタン side》

「成功……したのか?それとも……」


 『失敗』の二文字が脳裏に浮かび、私は恐る恐る空を見上げた。

柔らかい光を地上に落とす満月は、いつも通りで……変化がない。

ヒヤリと……背筋に冷たいものが走った。


 ま、まさか本当に失敗したのか……!?きちんと手順通りやったのに……!?

それとも、材料の質が悪かったのか!?死にかけの魂ではなく、健康な魂が良かったのか!?


 顔を青くして、焦りまくる私は『失敗した代償として、何かされるのでは!?』と気が気じゃなかった。

────と、ここで“ガチャッ”と扉の開く音が耳を掠める。

でも、それは部屋から聞こえたものじゃなくて……。


「────月の門が開いたのか……?」


 今の音は、確かに上から……もっと言うと、月の方から聞こえてきた。

そもそも、私の部屋に無断で入ってくる輩など、居ない。

つまり────魔術は見事成功したってことだ。


「さあ、我が愛しの妻メイヴィスよ!私の元へ来い!お前を出迎える準備は、既に済んでいる!安心して、私の胸に飛び込んで来い!」


 期待で胸を膨らませる私は、アメジストの瞳を輝かせ、天を仰いだ。

────そこに愛しのメイヴィスが居ると信じて……。

だが、そこに居たのは愛しのメイヴィスでも麗しい女神でもなかった。

満月を背に空を舞うのは─────架空の生物とされている、ドラゴンだった。


「な、何で……」


 明るい未来が来ると信じて疑わなかった私は、目の前に広がる残酷な現実にただ呆然とした。


 何故メイヴィスではなく、このような醜い生物が現れたのか……。

やはり、メイヴィスはまだ私のことを怒っているのか?だから、こんな嫌がらせを……?


「……愛の試練にしては、少し過激すぎないか?」


 私は禍々しいオーラ放つ二体のドラゴンに怯え、ヘナヘナとその場に座り込んだ。

不意に、焦げ落ちたオダマキの花びらが宙を舞う。

オダマキの花言葉は─────『愚か』


 メイヴィスを取り戻すため、凶行に及んだ愚かな私はこの世界に異世界のモンスター(大厄災)を招き入れてしまった。

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