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絶望

 私とトリスタン王子の間に割って入ってくれたハワードに、私は少しだけ救われた。

嗚呼、私のことを庇ってくれる人も居るんだと……。


「聖女様に関することは、王家の一存で決められることではありません!ましてや、聖女様を罪人扱いなんて……到底許されることではありません!教皇聖下や司祭様たちに許可は貰ったのですか!?」


 教会という後ろ盾を持つハワードは、思い切って強気に出る。

『さすがにこれで引き下がるだろう』と思案する彼に、トリスタン王子は楽しげに笑った。

全く焦りを見せない彼は、懐からある一枚の紙を取り出す。そして、それを得意げに掲げた。


 あ、あれは……!?


「教皇と司祭の許可だったか?それなら、ほら────きちんと貰っているぞ」


 ズイッと前に突き出された紙には、確かに『聖女交代を許可する』と書かれており、教皇聖下と司祭様のサインも書かれている。


 間違いない……本物のサインだわ。

司祭様はさておき、教皇聖下のサインは何度か見たことがあるから、断言できる。あれは偽装なんかじゃない、と……。


「そ、そんな……馬鹿なっ!!」


 上層部の裏切りを知り、ハワードは一瞬で青ざめた。

余程ショックだったのか、ヘナヘナとその場に座り込む。

絶望した様子のハワードを見て、トリスタン王子は満足気に微笑んだ。


「どうやら、教会のトップ連中は前々から何の力も持たないメイヴィスに、不信感を抱いていたようでな……『王国随一の治癒魔法の使い手であるロゼッタを聖女にしたらどうだ?』と言ったら、直ぐに食いついてきたよ」


「王国随一だなんて……私はまだまだですわ」


「はっはっはっ!謙遜するな!お前の治癒魔法は、本当に素晴らしいからな!外見しか取り柄がない無能なメイヴィスより、ずっと聖女に相応しいだろう!」


「まあっ!光栄ですわ!」


 『うふふっ』と嬉しそうに笑うロゼッタ様は、満更でもない様子だった。


 確かに私には何の能力もない。

治癒魔法なんて使えないし、物凄く運動神経がいい訳でもない。

トリスタン王子の言う通り、私の取り柄なんて外見くらいだろう。


 でも、一つ間違えちゃいけないのが聖女の意味と目的だ。

聖女はあくまで神の花嫁。何か特別な力がなきゃいけないルールなんてない。

要するに治癒魔法が使えるからと言って、聖女になれる訳じゃなかった。

でも、それを今言ったところで彼らはきっと納得しないだろう。


 私は手の甲にあるハート十字の紋章を撫で、己の無力さを恥じる。

絶望感に苛まれる私を他所に────ハワードはハッとしたように正気を取り戻した。


「────聖女様!お逃げ下さい!貴方様をここで死なせる訳には、いきません!」

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