メイヴィスの祟り《トリスタン side》
「落ち着いて、聞いてください。実は今、王都で────異常現象の原因は元聖女メイヴィスの祟りではないか、と噂されているんです」
メイヴィスの祟り……?
予想の斜め上を行く回答に、私はポカーンと口を開けて固まった。
すると、ロゼッタは捲し立てるようにこう言葉を続ける。
「ハッキリ言って、メイヴィスの祟りなんて有り得ませんが、今はそんな事どうでもいいのです。事実であろうとなかろうと、それは些細な問題に過ぎません。今、重要なのはその噂を民達が信じていること。噂を信じる者が増えれば、我々の立場も危うくなるでしょう。だから、この状況を逆手にとって、別の人を真犯人として仕立てあげれば……」
自信満々といった表情で、ロゼッタは作戦内容を語る。
でも、私は彼女の話なんて全く聞いていなかった。
ポカーンと口を開けたまま、とある単語をひたすら繰り返す。
メイヴィスの祟り、メイヴィスの祟り、メイヴィスの祟り……メイヴィスの祟り!!
そうか!!これはメイヴィスの仕業だったのか!
きっと、メイヴィスは自分を無理やり攫ってくれなかった私を恨んでいるのだろう!だから、こんなことをしてまで、私に自分の存在をアピールしているのだ!!
この異常現象には色々迷惑を掛けられたが、これもまた愛情の裏返しだと思えば痛くも痒くもない!むしろ、愛おしいくらいだ!!
メイヴィスに愛されていると信じて疑わない私は、ニンマリと笑う。
腹の奥底から湧き出る喜びに身を委ね、勢いよくテーブルを叩いた。
「こうしちゃいられない!メイヴィスを迎えに行かなくては!きっと、あいつも私を待っているに違いない!」
「えっ……?はいっ!?ちょっ、待ってください!トリスタン王子!」
ガタッと音を立てて椅子から立ち上がった私は、ロゼッタの言葉を無視して、歩き出した。
行き先はもちろん────王宮図書館だ!
あそこは禁書に分類される魔術系の本が多数ある。
魔法が使えない今、魔力を必要としない魔術に頼る他ないだろう。
まあ、その分、危険も伴うが……。
魔術系の本が禁書に分類される理由はただ一つ────魔力の代わりに生贄を必要とするからだ。
行使する魔術の難易度によって生贄の種類は様々だが、危険なものに変わりない。
だが、それでも……!!あの世へ逝ってしまったメイヴィスを取り戻すには、これしか方法がなかった!
その結果、何人死のうと構わない!
「確か、異界との門を開く魔術もあったよな……とりあえず、あれを試してみるか」
愛する者のため、私は危険な魔術に手を染めることを決心した。
それがどれほど愚かな決断なのかも、知らずに……。
待っていろ!メイヴィス!お前の夫である私が必ずお前を迎えに行ってやるからな!




