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聖女の訪問《トリスタン side》

 ブォーブォーと激しい風が吹き、白い粒が窓を叩く。

ここ最近ずっと異常現象が続いていたが、今回はその比じゃなかった。

何故なら─────王家の所有地だけ、季節外れの()が降っているのだから。

まあ、『降っている』というより、『吹雪いている』と言った方が正しいかもしれないが……。


 突然の異常気象に王城内はざわつき、急いで暖炉が開放された。

城を捨て、別の場所に移るという方法もあったが、民達の反感や貴族からの不信感が高まる中、城を空けるのは非常に不味い。

王城を乗っ取られでもしたら、大変だった。


 だから、私は王族の一員として仕方なく……本当に仕方なく城に残っているのだ。

なのに────何でこんな日に限って、聖女ロゼッタと面会しないといけないんだ!


 暖炉の炎ですっかり暖かくなった室内で、私は大して興味のない女と向かい合う。

最近、平民の世話を始めたという女は、真剣な面持ちでこちらを見据えた。


「まずは突然の謁見の申し出にも関わらず、対応して頂きありがとうございます。こうして、お会いするのは偽聖女メイヴィスを捕らえたとき以来でしょうか?トリスタン王子におかれましては……」


「形式ばった挨拶は不要だ。それより、早く本題に入れ」


 特に中身のない長ったらしい挨拶に嫌気が差し、ロゼッタの言葉を遮る。

『しっしっ!』と追い払うような仕草をすると、彼女は一瞬顔を顰めた。でも、直ぐに表情を取り繕う。


「畏まりました、トリスタン王子」


 取って付けたような笑みで、応じるロゼッタは『それでは、本題に入りますね』と言って、話を切り出した。


「トリスタン王子もご存知の通り、現在フィオーレ王国では謎の現象が続いています。特にその影響を受けているのは、フローレンス王家と教会です。この事態をこのまま放置すれば、各国から見放され、貴族達からも見捨てられるかもしれません」


「……仮にそうだとして、お前は一体何を言いたいんだ?」


 身振り手振りで事態の深刻さを必死に語るロゼッタに、私は冷ややかな目を向ける。

彼女の芝居がかった演説は前置きが長すぎて、退屈だった。

結論を急ぐ私に対し、ロゼッタは嫣然と微笑む。


「そうですね、結論から先に言いましょうか────トリスタン王子、また私と手を組んでください」

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