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沈黙《ハワード side》

 レーヴェン様に呼び出され、執務室を訪れた私はメイヴィスの送迎を頼まれた。

『分かりました』と頷き、部屋を出る最中────私は視界の端に映った黒髪の男女について、考える。


 ただならぬ雰囲気を持つ方々だったが……一体、何者なんだ?

客室ではなく、執務室に通すくらいだから、レーヴェン様と親しい間柄であることは確かだが……。


「あの、メイヴィス様……執務室にいらっしゃった黒髪のお二人はお客様ですか?」


 聞いていいのか少し迷ったものの、私は好奇心に押される形で質問を投げ掛けた。

『問題があれば、適当にはぐらかすだろう』と思案する中、メイヴィスはすんなりと口を開く。


「旦那様の古くからの知り合いみたい。黒髪の男性は破壊神ヘレス様で、地獄の管理人よ。で、黒髪の女性がヘレス様の妻であるアイシャさん。お二人とも、とても優しくて頼りになるの」


 『さっきも色々教えてもらったわ』と嬉しそうに語るメイヴィスは、ゆるりと頬を緩めた。

喜びに満ち溢れる彼女を前に、私は二人の正体に目を剥く。


 地獄の管理者……?何故、そのような方々がここに……?いや、城を訪れること自体は全く問題ないが、タイミングがどうも引っ掛かる……。

古くからの知り合いとはいえ、メイヴィス様の件でピリピリしている時に城へ招き入れるだろうか……?


 『無駄を嫌うレーヴェン様なら、追い返しそうだけど……』と思案しつつ、私は廊下の曲がり角を曲がった。

後ろを歩くメイヴィスにチラリと目を向け、物思いに耽る。

そして────ある一つの仮説が脳裏を過った。


 もしや────レーヴェン様は人間たちに復讐でもするつもりか?いや、もしかしたら、もうしているかもしれない……。

あのお方は比較的温厚だけど、メイヴィス様に関わることだけは過激になるから……。

────ということは、ヘレス様とアイシャ様は復讐の協力者として、招き入れられたのか……?


 点と点を線で結び、私は一つの結論に至った。

物騒極まりない考えに辟易しつつも、『地獄の管理人なら、復讐のプロだろうし……』と考える。

何より、死後の復讐を実行するなら、ヘレス様とアイシャ様の協力は必要不可欠だった。


 復讐……か。果たして、メイヴィス様は喜ぶだろうか……?

『自分のために』と感動してくれるなら、いいが……もしも、『自分のせいで』と嘆くなら────今からでも、真実を話した方がいいのかもしれない。下界での出来事はもう皆に話してしまった、と……。


 レーヴェン様と交わした約束を思い返しつつ、私は『どうするべきか』と思い悩む。

欲を言うなら、正直に話して楽になりたかった。

そうすれば、罪悪感を打ち消せるから……でも────それは所詮、自己満足に過ぎない。

メイヴィスのためを思うなら、黙っておくべきだろう。

世の中には、知らない方が幸せなこともあるのだから。

『最後まで隠し通せば、問題ない(誰も悲しまない)』と判断し、私は視線を前に戻した。

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