婚礼式とは?
ということは、私も旦那様とよく似たデザインの紋章が手に入るのかしら?それはちょっと楽しみね。
「とにかく婚礼式は、とっても大切な行事なの!なるべく、早くした方がいいわ!準備さえ整っていれば、今すぐやらせたいくらいよ!それで、レーヴェンはいつやるつもりなの?」
婚礼式の重要性を力説するアイシャさんは、物凄い剣幕で旦那様に迫る。
『ちゃんと答えないと、許さない』と言わんばかりの勢いに辟易しつつ、旦那様は口を開いた。
「……アイシャには、関係ないでしょ」
「関係あるわよ!私はメイヴィスちゃんの先輩で、友達なんだから!」
『無関係なんて、言わせない!』と主張するアイシャさんは、旦那様の反論を跳ね除ける。そして、こう言葉を続けた。
「いつやるのか決まってないなら、明日やりましょう!早いに越したことはないんだし!」
「勝手に決めないでほしいんだけど……」
「ハッキリしないレーヴェンが悪いんでしょう!とにかく、明日ね!?分かった!?」
「はぁ……メイヴィスがそれで良ければ、僕は構わないよ」
アイシャさんの勢いに押され、旦那様は半ば諦めたように項垂れる。
やれやれと肩を竦める彼に、アイシャさんは小言を零すと、勢いよくこちらに顔を向けた。
「いいわよね!?メイヴィスちゃん!」
「は、はい……!」
反射的に頷いてしまった私は、慌てて旦那様にアイコンタクトを送るものの、『大丈夫だよ』と手を振られる。
一度スイッチの入ったアイシャさんを止めることは不可能だと、割り切っているらしい。
アイシャさんは『よし、決まり!』と満足気に微笑むと、ティーカップに手を伸ばした。
「あっ、そうそう!婚礼式には、私とヘレスも参加するから!」
「ちょっ……!それはさすがに……」
「反論は受け付けないわよ!元はと言えば、きちんと説明していなかったレーヴェンが悪いんだから!」
難色を示す旦那様に対し、アイシャさんは『やったと嘘をつかれても困るから!』と述べる。
全く信用されていない旦那様は、嫌そうな顔をするものの……最終的には白旗を挙げた。
「はぁ……分かったよ」
『どうせ、また押し切られるんだろう』と予想していたのか、旦那様は諦めたように天を仰ぐ。
『もう勝手にしてくれ』と言わんばかりの態度に、アイシャさんは小さくガッツポーズをした。




