懺悔《平民 side》
王都で蔓延した疫病によって、同僚の一人が床に伏せた。
一報を受けた俺は、急いで同僚の元へ駆けつけた────のだが……何故か病室に聖女様が居た。
艶やかな金髪を風に靡かせ、エメラルドの瞳に憂いを滲ませる聖女様は、患者達の世話を焼いている。
その姿はまさに聖母様のようで……激しく心を揺さぶられた。
「せ、聖女様がどうしてこんなところに……?」
「あら、私がここに居てはいけませんか?」
「い、いえ!そういう訳ではなくて……!ただここに居ると、聖女様まで疫病に罹ってしまうのではないかと不安で……」
変な誤解を生む前にと、慌てて弁解を口に述べる。
すると、聖女様はふわりと柔らかい笑みを浮かべた。
「確かに私も疫病に罹る可能性はあります。聖女と言えど、私は人間なので……でも、感染することを恐れていては人々を助けることは出来ません。今の私に出来ることはあまり多くありませんが、少しでも誰かの力になりたいのです」
「せ、聖女様……!!嗚呼、なんてお優しい方なんだ……!!」
自分のことなど気にせず、救いの手を差し伸べてくれた聖女様には、頭が上がらない。
俺は感激するあまり、涙を流した。
ただ綺麗事を並べるしか能がない奴らより、聖女様の方がずっと素晴らしい!感染するリスクも承知の上で、我々の元に駆け付けて下さるなんて……!!やはり、この方こそ聖女に相応しい!!
おぉ、神よ!感謝します!このような素晴らしい方を聖女にしてくれて!
「聖女様、本当にありがとうございます!そして、申し訳ありません!私は教会の管理する土地が朽ち果てたと聞いたとき、聖女様方が神の気に障ることでもしたのではないかと疑いました…!!明確な根拠もなく、聖女様や教会を疑った罪深き私をどうかお許しください!」
聖女様の前で跪き、必死に懺悔すれば心優しい聖女様は穏やかな表情で頷いた。
彼女からは怒りなど、微塵も感じない。
「私は貴方の全てを許します。だから、もう気に病む必要はありません。これからも神の信徒として、勤勉に励みなさい」
「はい!ありがとうございます!聖女様!」
広い心で俺の罪を許してくれた聖女様は『次の部屋に行ってきますね』と言って、この場を立ち去る。
俺は彼女の姿が見えなくなるまで、ただひたすら頭を下げ続けた。
これからは教会を……いや、聖女様を信じて生きて行こう。
彼女について行けば、間違いない筈だ。




