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聖女の座を手放さないために《ロゼッタ side》

「あ、あの……落ち着いて聞いてくださいね?実は────緑が枯れたのは教会と王家が所有する土地だけで、他の場所は普通に作物が育っているんです」


 まだこれは公表されていない事実なのか、彼女は小声でそう言った。

予想外の事態に直面した私は、驚きのあまりたじろぐ。


 な、何ですってぇ……!?そんなことって、有り得るの!?


「一体、何がどうなっているの……?どうして、教会と王家の所有地だけ……?まるで、誰かが私達を陥れるために狙い撃ちしているとしか……」


 でも、一体誰が……?

私達に恨みを持つ者は多く居るが、こんな大胆な手段を用いて攻撃してくる者は少ない。

そもそも、それだけの力があれば、わざわざこんな回りくどいやり方はしないだろう。


 とりあえず、誰かの意図があるのは明白。なら、反撃する手段を考えないと……私はこんなところで立ち止まる訳にはいかないの。だって、私は選ばれた人間なんだから。


「民達の反応は?」


「……ハッキリ言って、微妙です。一応、『何者かの策略により大地の恵みを奪われた』と説明したのですが、反応がまちまちで……『神聖な場所である教会を汚すなど、神への冒涜だ!』と素直に信じる者も居れば、『神の気に触ることでもしたんじゃないか』と教会に不信感を抱く者も居ます」


「そう……」


 まだ最悪の状況には陥っていないけど、このままだと民の信頼を失うことになる……それだけは何としてでも、阻止しなければ。

ここで私の存在価値を落とす訳には、いかないわ。


 一旦、考えを整理した私は『ふぅ……』と息を吐き出し、グッと手を握り締めた。


「治癒院への支援はそのまま続けるよう、神官たちに伝えて。私は治癒院へ出向いて、患者の世話をするわ。治癒魔法はまだ使えないけど、雑用くらいは出来る筈だから」


「えっ!?それはあまりにも危険すぎます!下手したら、聖女様まで疫病に罹って……」


「だからこそよ」


「えっ……?」


 困惑した様子でこちらを見つめる彼女は、こちらの意図を全く理解していないようだった。

実に残念な頭をした子である。


 聖女である私が疫病に罹るのも厭わず、患者の世話をすれば、民の心を動かすことが出来るでしょう?

完全に信頼を取り戻すことは無理でも、何もしないで静観するよりマシな筈……。

その『神の気に触ることをした』という噂も、ある程度かき消せる筈よ。

まあ、残念な頭をしている貴方に、そこまで丁寧に説明してあげる気はないけど。


「いいから、早く私の言ったことを実行しなさい。私はちょっと動きやすい格好に着替えてくるわ」


 私は困惑する彼女を置いて、自室へと向かった。

『待ってください!』と後ろから声を掛けられるが、一切歩みを止めない。


 メイヴィスを殺してまで手に入れた座よ、そう簡単に手放してなるものですか。

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