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裏庭の異常《ロゼッタ side》

 謎の疫病が王都に蔓延し、治癒院に支援物資を送った次の日。

私は再び信じられない光景を目の当たりにしていた。


「何よ、これ……?」


 気分転換に散歩でもしようと、教会の裏庭に来てみれば、そこには─────枯れた草花しかなかった。

彩り鮮やかな花々は無惨に枯れ落ち、緑の葉っぱは茶色に変色している。

木々に関しては中身まで腐ってしまったみたいで、表面が剥がれ落ちていた。


 腐れ具合にもよるけど、安全面を考慮して朽木は伐採しないといけないわね。

ここは子供達の遊び場になっているから、このまま放置できないわ。絶対に危ないもの。


 私は落ち葉が敷き詰められた地面を踏みしめ、庭の片隅にある小さな畑へ足を向ける。


「……畑も全滅したみたいね」


 昨日まで真っ赤な実をつけていたイチゴの苗は朽ち果て、地面から変な虫が湧いていた。


 一昨日発生した魔法使用不可と言い、昨日発症した疫病と言い……この世界は一体どうなっているの!?

ここまで異常事態が続くと、誰かの意図を感じざるを得ない……でも、一体誰が?何のために?そもそも、どうやってこんなことを?

魔法の使用妨害も、疫病の蔓延も、裏庭の枯死(こし)も……やろうと思って、出来ることじゃない。とてもじゃないが、人間業とは思えなかった。


「まさか、偶像に過ぎない神様が私達に天罰を下している……なんてことないわよね?」


 脳裏に思い浮かんだ考えに苦笑する私は、『馬鹿らしい』と吐き捨てる。

神に仕える身である聖女が神の存在を信じないなんて前代未聞だが、私は自分の目で見たことしか信じない。

そもそも、私が神の存在を信じていれば、メイヴィスを聖女の座から引き摺り下ろすなんてこと、しなかっただろう。


 とりあえず、今は被害の規模を確認して、治癒院への物資支援を考え直さなきゃ。あまりにも被害が酷いようなら、支援を打ち切らないといけないし……。


 人生計画が大きく狂う感覚を覚えながら、私は建物の中へと戻った。

すると、廊下の向こうから私の方へ一直線に向かってくる女性の姿が目に入る。

彼女は私のお目付け役を担う、例の神官だった。


「聖女様!探しましたよ!今まで一体どちらにいらっしゃったんですか!?」


「ごめんなさい。ちょっと気分転換に裏庭へ出てただけよ」


「あっ!では、もう畑や庭が枯れてしまった件はご存知なんですね!?」


「ええ、まあ……他の場所はどうなっているの?被害の規模は?」


 説明する手間が省けたと安堵する神官の女性に当然の質問を投げかけると、彼女はどこか気まずそうに視線を逸らした。

違和感を覚える反応に、私は首を傾げる。


 思ったより、被害が大きかったのかしら?もしくは枯死以外にも問題が生じたとか……?


「あ、あの……落ち着いて聞いてくださいね?実は────緑が枯れたのは教会と王家が所有する土地だけで、他の場所は普通に作物が育っているんです」

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