表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/112

不審者?

 青々と広がる空を見上げながら、私は裏庭に繋がる通路を進んだ。

肺いっぱいに外の空気を吸い込み、清々しい気分で前進する中────私は目的地に辿り着く。

まず目に飛び込んできたのは、四季折々の花で満たされた美しい空間だった。

自然の神秘とも呼ぶべき光景を前に、私は瞠目する。


 旦那様に散歩を勧められて、来てみたけど、本当に綺麗ね。

聖書に載っていた楽園って、こんな感じかしら?


 美しく咲き誇る花々に心奪われる私は、僅かに表情を和らげる。

『ハワードも連れてくれば良かった』と考える中、突如背中に衝撃が走った。


「────やっと見つけた!」


 耳元で聞こえる弾んだ声に、私は『えっ!?誰なの!?』と目を見開く。

そして、ようやく知らない人に抱きつかれたのだと悟った。

『ふ、不審者……!?』と混乱する中、抱きついてきた人物は一旦体を離し、私の前まで躍り出る。


「ねぇ、貴方でしょう!?レーヴェンのお嫁さんって!」


 そう言って、キラキラと目を輝かせるのは────作り物のように美しい女性だった。

艶のある黒髪を風に靡かせ、ニッコリと笑う彼女はルビーの瞳に喜びを滲ませる。

また、胸元の空いたドレスを着用しており、すべすべした小麦色の肌が特徴的だった。

大人っぽい顔立ちも実に艶やかで美しく、おまけにスタイルも良い。

仕草や表情は少し幼いが、憎めない感じで非常に愛らしかった。


 『ねぇ、貴方よね!?』と詰め寄ってくる彼女に、私はたじろぐ。

戸惑いながらも、おずおずと頷くと、彼女は嬉しそうに頬を緩めた。


「私はアイシャよ!レーヴェンのお嫁さんがこっちに来たって聞いて、会いに来たの!夫と一緒にね!」


 『会いたかったわ!』と真っ直ぐに想いを伝えてくる彼女────改め、アイシャ様は至って上機嫌である。

無邪気に笑う彼女を前に、私は少しだけホッとしてしまった……伴侶持ちで良かった、と。

旦那様を呼び捨てにするほど、仲のいい彼女が恋敵だったらと思うと、本当に恐ろしい。

最悪の未来を想像した私は身震いしながら、ルビーの瞳を控えめに見つめ返した。


「えっと、私はメイヴィスです。それで、その……アイシャ様の旦那様は今、どちらに?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ