後悔《ハワード side》
彼らと同類のように扱われるのは癪だが……私に文句を言う権利など、ない。聖女様を守れなかったという点においては、同罪だからだ。
叱責も嫌味も暴言も……全ては自分のせい。ならば────きちんと責任を取るべきだろう。
メイヴィスを守れなかった後悔に苛まれる私は、自責の念に駆られるままソファから立ち上がった。
両肩に重くのし掛かる罪悪感に押し潰されるように、私は膝を折る。
項垂れるように俯き、数秒床を見つめると────意を決して顔を上げた。
「レーヴェン様、カシエル様。この度は誠に申し訳ございませんでした。聖女様を死なせてしまったのは、私の責任です。ですから、どうか上層部の裏切りに気づけなかった私を……いえ、聖女様を守り切れなかった私を罰してください」
懇願するように両手を組む私は、ひたすら懺悔した。
言い訳もしない私に、レーヴェン様は困ったように眉尻を下げる。でも、決して同情はされなかった。
「許しではなく、罰を求めるか……分かった。そこまで言うなら、償う機会を与えよう」
こちらの願いを叶えると宣言したレーヴェン様は、少しだけ身を屈める。
「元神官長ハワード────君にメイヴィスのお世話係を命じる。天使となり、もう一度メイヴィスに仕えなさい」
聖女様に仕える……?もう一度……?そんなこと……許されるのか?
罰とは程遠い内容に目を剥くと、一瞬だけ……本当に一瞬だけ願ってしまった。想像してしまった。考えてしまった────メイヴィスに仕える幸せな日々を……。
でも、罪人たる私に夢を見る資格はない。『もう一度だけ』などと……欲張ってはいけなかった。
「お言葉ですが、レーヴェン様。それでは、償いになりません。私に聖女様のお世話係になる資格など……」
『ありません』と続ける筈だった言葉は、レーヴェン様に遮られる。
「何か勘違いをしているようだけど────罪を断定するのも、罰を与えるのも全てメイヴィスの役目だよ。君が神の教えに背いたなら話は別だけど、そうじゃないだろう?なら、我々の与り知るところではない」
『神罰の対象外だ』と冷たく突き放し、レーヴェン様は肩を竦めた。