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混乱《ハワード side》

 次から次へと舞い込んでくる新情報に、私は目を白黒させる。

衝撃のあまり目眩を引き起こす中、レーヴェン様は冷静に言葉を続けた。


「君がこうして自由に活動できるのは、復活の儀式を行ったからだよ。まあ、復活と言っても蘇った訳じゃないけどね。生前の記憶と人格を一時的に引き出しただけだよ」


「な、なるほど……?」


「何か質問はあるかい?」


「い、いいえ……」


 衝撃の連続で疑問点を整理する余裕もない私は、フルフルと首を横に振る。

力なく項垂れて放心状態になりかける中、レーヴェン様は満足そうに目を細めた────かと思えば、一瞬にして真剣な表情に変わる。


「じゃあ、一つ聞きたいんだけど────君はメイヴィスの死について、何か知っているかい?」


「聖女様の死……?」


 聞き捨てならない単語にピクリと反応を示した私は、恐る恐る顔を上げた。

ブワッと噴き出してくる冷や汗に耐え、これでもかというほど目を見開く。

緊張で震える手を握りしめる私は、ただただ呆然とした。


 死ん、だのか……?本当に……?神の花嫁である聖女様が……?


 『有り得ない』と否定したい気持ちを抑え、私は震える声で質問を投げ掛ける。


「聖女様は二十歳の誕生日を迎える前に、お亡くなりになられたのですか……?」


「ああ、そうだよ。だから、僕達は君を復活させたんだ。メイヴィスの死因を調べるためにね」


 間髪入れずに頷いたレーヴェン様は、『メイヴィスも今、天界(こっち)に居る』と断言した。

見事なまでに希望を打ち砕かれた私は、ショックのあまり項垂れる。


 そうか……そうだよな。冷静に考えて、逃げ切るなんて到底不可能だ。聖女様は王国騎士に包囲されていたのだから。

そのまま、捕まったのは言うまでもないだろう。


「じゃあ、やっぱり────聖女様はトリスタン王子達のせいで、命を落としたのか……?」


 偽聖女として糾弾された事実を思い返し、私は恐ろしい結論に至る。

『あのバカ王子でも、さすがにそこまでは……』と考えるものの、完全に否定は出来なかった。現にメイヴィスは命を落としているのだから。

最悪の結末が脳裏を過る中────カシエル様が勢いよく身を乗り出した。


「その話、もっと詳しく聞かせてください!トリなんたら王子がメイヴィス様の死に関わっているんですか……!?」


 ほんの少しだけ声を荒らげるカシエル様は、必死の形相でこちらに詰め寄る。

想定外の食いつきっぷりに、私は唖然としながらも、おずおずと頷いた。


「は、はい……恐らく」


 直接この目で見た訳ではないため、若干言葉を濁す。

でも、『殺された可能性がある』というだけでもショックなのか、カシエル様はグニャリと顔を歪めた。


「事故死じゃなかったんですね……」


 絞り出すような声でそう呟いたカシエル様は、キュッと口元に力を入れる。

そして、思い詰めたような表情を浮かべると、悔しそうに俯いた。

『なんて無神経なことを言ってしまったんだ』と落ち込むカシエル様は、今にも泣きそうである。

膝から崩れ落ちそうになる彼を横目に、レーヴェン様は一度深呼吸した。


「とりあえず─────メイヴィスの死因に関わること全て……思いつく限り、話してくれる?」

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