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死後

 激しい憎悪と絶望に苛まれながら、命を手放した私は────どこまでも白が続く空間で、目を覚ました。

クッションのように柔らかい地面から体を起こし、ゆっくりと立ち上がる。

キョロキョロと周囲を見回すものの……出口はおろか、人っ子一人見当たらなかった。


 ここは一体どこ……?私は何でここに……って、そうだわ!

確か私は王都の広場で公開処刑されて!それでっ……!


「────死んだんだわ」


 口を衝いて出た言葉に目を見開き、私は戦慄した。

一瞬にして甦った記憶にクシャリと顔を歪める私は、手を強く握り締める。

この身が炎に焼かれる感覚を思い出しながら、私は恐る恐る自分の体を見下ろした。


 ……えっ?あれ?怪我がない……?それどころか、服や体が綺麗になってる!!


 死亡した影響か、生前に受けた傷や汚れは綺麗さっぱりなくなっていた。

私は己の無事を確かめるように手を閉じたり開いたりしながら、『そう言えば、目が覚めてから痛みが消えていたな』と気づく。


「とりあえず、ここら辺を探索してみましょうか。幸い、体の自由は利くみたいだし」


 『動けるうちに動かないと』と考え、私はふと顔を上げた。

『まずは真っ直ぐ、行ってみよう』と思い立ち、一歩前へ踏み出した瞬間─────。


「────おやおや、僕の花嫁(・・・・)は随分と行動的だね」


 背後から、聞き慣れないテノールボイスが聞こえた。

ピタリと身動きを止めた私は、思わず身構える。


 さっきまで、誰の気配も無かったのに一体いつの間に……!?

いや、これは逆にチャンスと捉えるべきかしら?上手く情報を聞き出せれば、ここがどこなのか分かるかもしれないもの!


 僅かな期待と不安を抱きながら、私は恐る恐る後ろを振り返る。

すると、そこには────神聖さすら感じる美しい御仁が立っていた。


 後ろで緩く結い上げられたラベンダー色の長髪、神々しさを感じる黄金の瞳、彫刻のように美しい中性的な顔立ち。

思わず見惚れてしまうほど綺麗な彼に、私は何故だか心当たりがあった。


 彼とは初対面の筈なのに……私は彼を知っている。だって、彼が……彼こそが!


「────旦那様(・・・)……!」


 根拠の無い直感に押されるまま、私は彼に抱きついた。

はしたないのは分かっていたが、それでもちゃんとこの手で彼の存在を感じていたかったのだ。

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