表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/112

同情の余地なし《ロゼッタ side》

 嫌……!もう死にたくない……!痛いのは、もう嫌なの……!!


 グリフォンと呼ばれる魔物に肩を掴まれ、空を飛ぶ私は涙目で地上を見下ろす。

人が豆粒のように見えることから、相当高い位置に居ることだけは、理解出来た。


「嫌っ!お願いっ!助けて……!!メイヴィスのことは、謝るから!!」


 鳥のような魔物に懇願しながら、私はジタバタと暴れる。

みっともなく命乞いをする私に、魔物は一瞥もくれない。

こちらの言い分など、どうでもいいのか……一瞬の躊躇いもなく、肩から手を離した。

刹那────私の体は重力に従って、下へ落ちていく。

どんどん近づいてくる地面に恐怖しながら、私は身を竦めた。


 ま、また死ぬの……?あの硬い地面に打ち付けられて……?


「い、いやぁぁぁぁあああ……!!誰か助けてぇぇぇえええ!!死にたくなっ……」


 『死にたくない』と嘆くことすら許されず────私の体は勢いよく地面に打ち付けられた。

ベシャッと嫌な音が鳴り響く中、潰れた頭や腹から大量の血を流す。

体は徐々に冷たくなっていき、視界も霞んで行った。

悲鳴を上げることすら出来ない私は、絶望の中でそっと意識を手放す。

もはや、死に抗うことなど出来なかった。




 ────メイヴィスに謝れば、この悪夢から解放されるのだろうか?

 ────メイヴィスに許しを乞えば、全てが丸く収まるのだろうか?

 ────メイヴィスに許されれば、私は自由になれるんだろうか?


 ぼんやりとした意識の中、私は漠然とした疑問を抱く。

数えるのが億劫になるほど、何度も死を体験したせいか、私の精神状態は限界を迎えていた。

妬ましいと思っていた相手に、縋るくらいには……。


 ────でも、神は救いを求めることすら、許してくれなかった。


「────貴方に……貴方なんかにっ!メイヴィスちゃんに縋る権利は、ないわ!ロゼッタ・グラーブ・ジェラルド!」


 耳を劈く金切り声に怒鳴りつけられ、私は目を覚ました。

急いで体を起こして、周りを見回すと────黒髪美女が目に入る。


 この方は、確か……地獄の管理人の妻であるアイシャ様、だったかしら?


「あれだけの事をしておいて、メイヴィスちゃんに縋ろうだなんて……!!恥を知りなさい!!この雌豚がっ……!!」


 私の心を読んでいたのか、アイシャ様は怒りを露わにした。

苛立たしげに眉を顰める彼女は、『憎くて堪らない』といった様子で、こちらを睨みつける。

血のように真っ赤な瞳は怒りを孕み、殺意に満ち溢れていた。


「貴方が全く反省していない事は、よく分かったわ……!これからは、もっと罰を重くするから覚悟なさい!」


 こちらを指さして、堂々と宣言したアイシャ様に迷いはない。

確認するまでもなく、本気であることは明白だった。


 ま、不味い……!!これ以上、罰を重くされたら、私の心が壊れてしまうわ!


「ま、待ってください!それだけは、どうか……!!」


「お黙りなさい!貴方に発言の許可を与えた覚えはないわ!」


「で、ですがっ……!!」


「舌を引きちぎられたくなかったら、黙りなさい!」


 何とか食い下がろうとする私に対し、アイシャ様はピシャリと言い放つ。

そして、近くに居た魔物に指示を出すと、彼女はクルリと身を翻した。

徐々に遠ざかって行く小さな背中を前に、私は『引き止めるべきか』と考える。

でも、『舌を引きちぎる』という脅しが頭から離れず……声を出せなかった。


 『嫌だ!やめて!』と叫びたいのに……怖くて何も言えないなんて……私はいつから、こんなに臆病になったのかしら?


 惨めな自分に嫌気が差し、私はポロポロと大粒の涙を零す。

でも、残念なことに────誰かの同情を引くことは出来なかった。

番外編も、これにて完結となります。

最後の最後までお付き合いいただき、ありがとうございました┏○ペコッ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ