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何故?《トリスタン side》

番外編は過激な内容となっておりますので、苦手な方はスルーしてください。

 一体、何故こうなったのだろう……?何故、私はこんなところで、酷い目に遭わされているのだろう……?本来であれば、生き返ったメイヴィスと共に愛を育んでいる筈なのに……。


 灼熱地獄にて、身を焼かれる……いや、溶かされる私はただ呆然としている。

『心ここに在らず』という言葉が似合う状態で、絶望を噛み締めていた。


「私はただ────メイヴィス(美しいもの)を愛でたかっただけなのに……」


 ただそれだけなのに……気がついたら、メイヴィスは他の男に奪われ、想像を絶するほどの悪夢に魘された。

あれは幻の筈なのに……身を引き裂かれるような痛みも、この世の全てに絶望する感覚も全て体に残っている。まるで『忘れるな』とでも言うように……。


 そして、ようやく悪夢から目覚めたかと思えば、地獄で拷問を受ける始末……私の人生はメイヴィスを処刑した日から、狂いに狂っていた。


「何故、私がこんな目に……」


 絶望に打ちひしがれる私は、もう何度目か分からない疑問を口にするものの……誰も答えてはくれない。

代わりに、マグマへ突き落とされた女性の悲鳴が上がった。

監視役の天使は『いやぁ!助けてぇ!』と叫ぶ女性のことなど気にも留めず、淡々と仕事をこなす。

慈悲の欠片もない対応に、女性は『化け物!悪魔!』と暴言を吐いた。


 嗚呼、本当に煩わしい……。

メイヴィス以外の声など、聞きたくもない。

何故、ここの住人は(みな)汚いのか……外見も中身も醜いなんて、救いようがないじゃないか。

せめて、美しいものが一つでもあれば……。


 汚物だらけの地獄に心底嫌気が差した私は、メイヴィスの笑顔を恋しく思う。

『もし、もう一度会えるなら……』と淡い期待を抱く中、ドロドロに溶けた体が限界に差し掛かった。

感覚が麻痺して痛みすら感じなくなると、私はそっと目を閉じる。


 ────もう何度目か分からない死の訪れに、私は抗うことなく意識を手放した。

どうか、全て夢でありますようにと……起きたら、全部元通りになっていますようにと願いながら。


 でも────当然ながら、私の願いは聞き届けられず……灼熱地獄で、目を覚ますのだった。

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