表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/112

長生き

 ガンッと勢いよく背中を強打したロゼッタ様は、あまりの痛みに呻く。

でも、これはほんの始まりに過ぎなかった。


「いやっ……!?ちょっ……!離し……ぁあ!?」


 一瞬だけ白目を剥いたロゼッタ様は、何故かビクビクと痙攣する。

『ぁ……あ……』と口端から声にも満たない音を漏らし、皮膚にくい込んだ棘を掴んだ。

でも、上手く体が動かないのか、棘を取り除くことは出来ない……。

目尻からポロリと涙を零すロゼッタ様に、私は困惑した。


 ロゼッタ様の身に一体、何が……?

蔓のせいであることは確かだけど、具体的に何をされたかまでは分からないわね……。


「あの、旦那様」


「ん?なんだい?」


「ロゼッタ様に一体、何をしたんですか……?」


 控えめに黄金の瞳を見つめ返す私は、思い切って質問を投げ掛けた。

至極当然の疑問をぶつけられた旦那様は、特に驚いた様子もなく、ニッコリと微笑む。


「ん〜……そうだね。簡単に言うと────あの女の生命力を少しずつ吸い上げているんだ。神聖力で作り上げた蔓と棘を通してね」


 『血を吸われているようなものだから、相当苦しい筈だよ』と語り、旦那様はスッと目を細めた。

彼の視線の先には、苦しみもがくロゼッタ様の姿があり、悲惨な末路を予感させる。


 『少しずつ』ということは、そう簡単には死ねないでしょうね……ゆっくり、じわじわと追い詰められていく筈よ。


 『火あぶりの刑に処された時の私みたいに……』と零し、私は一つ息を吐く。

なんとも言えない気持ちで復讐を見守る中、旦那様はロゼッタ様を嘲笑った。


「君のお望み通り、長生きさせてあげるんだから、感謝してね────まあ、生還させるつもりは全くないけど」


 『死ぬのは決定事項だ』と暗に告げると、旦那様は後ろを振り返る。


「それじゃあ、僕達はもう行くよ。まだバカ王子の処分が残っているし」


 悶え苦しむロゼッタ様には目もくれず、淡々とした口調で別れを告げた。

言外に『一人で寂しく死ね』と宣告した旦那様は、私の腰を抱き寄せたまま踵を返す。

そうなると、私も来た道を引き返すことになる訳で……促されるまま、歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] あーもんど先生 こんにちは。 ご作品、楽しませていただいております。 ありがとうございます。 復讐というか報復というか…は凄まじいまでにキョーレツですが それだけ聖女への仕打ちが理不尽さ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ