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聖女

 ────聖女。

それは神の寵愛を一身に受ける存在であり、神の花嫁とされている。

天命を全うした聖女は正式に神の花嫁となり、天界で幸せに暮らすと言い伝えられていた。



 そして、その聖女こそ────私、メイヴィスである。

私はフィオーレ王国の大聖堂で光に包まれて生まれ、聖女の証であるハート十字を持っている。

世界中の人々が聖女である私を敬い、崇拝していた。神教の他に聖女教が出来るほどに……。


 私は手の甲にあるハート十字の紋章を撫で、己の肩に伸し掛るプレッシャーに『ふぅ……』と一つ息を吐く。

────と、ここで部屋の扉がノックされた。


「聖女様、神官長のハワードです」


「どうぞ、入って」


 間髪入れずに入室許可を出せば、部屋の扉がゆっくりと開かれる。

そこには、私の世話係と教育係を兼任する金髪碧眼の男性が立っていた。


 彼は小さい頃から私のお世話をしてくれた方で、親代わりのようなものだ。

貴族の勢力争いや国同士の抗争を防ぐため、中立の立場にある教会へ預けられた私にとって、彼は唯一頼れる大人だった。


 他の大人みたいに媚びたりしないし、私を特別扱いしたりもしない。

ハワードだけが私をきちんと叱ってくれる。彼の教育はかなり厳しかったけど、変に甘やかされるよりかは、全然マシだった。


「どうしたの?こんな時間に……?まだお祈りの時間まで、余裕があるわよね?」


「実はフィオーレ王国の第一王子が聖女様との面会を求めていまして……『突然来られても困る』と言ったのですが、聖女様と会うと言って聞かず……」


 困ったように顔を顰めるハワードに、私は思わず苦笑を漏らした。


 急な訪問と言えど、王族を無理やり追い返す訳にはいかないものね……。

教会への寄付金が一番多いのは、フィオーレ王国の王族だし。

無下に扱えば、寄付金を打ち切られるかもしれないもの。


 はぁ……仕方ない。

本当は会いたくないけど、教会の一員として義務を果たしましょう。


「分かったわ。とりあえず、会うだけ会ってみましょう。客室まで、案内してちょうだい」


「畏まりました」


 恭しく頭を垂れるハワードを尻目に、私は備え付けのソファから立ち上がる。

憂鬱な気分になる私は、零れそうになる溜め息を何とか堪えた。

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