弟子入り
最近忙しいです。この時期はいつもそうですけど
「よくも俺の右腕でを!」
その瞬間ツーの左腕が吹き飛んだ。
何が起きたのかさっぱりだ。
「次は足だ」
「黙れ!」
次は両足が吹き飛んだ。
四肢が無くなったツーはただそこに居るだけの存在と成り果てた。
そして天才さんはうつ伏せに倒れたツーの髪を引っ張りながら顔を持ち上げた。
「誰に雇われた?」
「ぺっ」
ツーは天才さんの顔に唾を履いた。
しかし唾は透けるように通り過ぎた。
あの軌跡なら当たるはずなのに。まるで一瞬幽霊になったかのように。
「話にならん、死ね」
「待ってください!」
そう大声で止めたのは、さっきまで捕まっていた女性だ。
「なぜ止める?こいつは死ぬことすらできない境遇に陥れようとしたんだぞ?」
「だからって殺すことはないでしょう。それにもう、そんな体ではなにもできませんよ」
「こいつにもう生きる理由も価値も無くなった。なら殺す方がいいだろう」
「その方に罰を与えるというのなら、尚更殺さないべきです。お兄様落ち着いてください」
妹に心配かけさせるなんて...ん?お兄様?!
全く似てないんですけど...
「...」
天才さんは髪から手を離し、他の誘拐犯を手錠で固く拘束し始めた。猫たちが拘束していたが、不十分と見たのだろう。
そして女性がこっちを向いて「助けていただき、ありがとうございます」と言った。
「いえいえ、困っている人を助けるのは当然ですからぁ」
いつも感謝はされているが、こんなに行事正しいのは初めてだったので、少し照れてしまった。
「明日にでも、正式的にお礼をさしてください」
「正式的に?」
「私のことを知らないのですか?」
誘拐されるほどの有名人なのだろうけど、王国のことはあまり知らなからなあ。
「私はイバラ王国第3王女、ルチェッタ・ピンク・レイドです」
レイド?レイドってまさか!
「この国の王女様?!」
「はい、その通りです」
王女が誘拐って、キノコのゲーム並の脆弱な警備ね...
いや、これはチャンスなのでは...?
「ねえ、ルチェッタさんは姫様なのよね?」
「はい、12歳なのでまだ姫です」
「ならその地位で命の恩人の儚い願いを叶えて欲しいの」
「?、私にできる範囲なら構いませんが...」
私はルチェッタの耳元で小さな声で囁いた。
「あの人の弟子にさせて」
「正気ですか?!」
「え?そうだけど...まさかスパルタなの?」
「いえ、そういう訳では...そういえば名前を聞いていませんでしたね」
「そういえばそうね、私はスターチスよ」
「スターチスですか...」
なにか考え始めた。私の名前ってそんなに個性的かしら?
「...いいでしょう」
「本当?やったあ!」
「まだ喜ぶのは早いですよ。絶対とは限りませんから」
そんな時「もう話は終わったか?」と、天才さんの声が聞こえた。
ルチェッタは1呼吸をおき、「お兄様」そう言った。
「どうした?ルチェ」
「スターチスさんを弟子にしてはくれませ...」「断る」
ルチェッタが喋り中に断ると言い出した。
「彼女はあの人じゃないんですよ。ただ似ているだけで断るのは、少し酷じゃないですか」
「そもそも、俺はもう弟子なんて取らない。あんな気分はもうごめんだ」
「彼女なら大丈夫です。この国は小さな犯罪は増えましたが、国家レベルの危険なものは全てお兄様が潰したじゃないですか」
全く話が分からない。弟子がいたけど何かあったのかな?
「何度言っても俺の決めたことは変わらん!」
「我もこやつを弟子にすることに賛成だ」
そういったのは猫だった。猫の獣人の肩にぶら下がっている見た目は普通の猫だ。
他の猫たちは皆いなくなっていた。
「あんたなんで喋れんのよ...」
猫は私の独り言を無聞こえなかったのか、無視したまま天才さんの方を見ていた。
「なぜだ?シオン」
この猫シオンって名があったのか。
「こやつなら、今の主の時を前へ進ませれるやもしれん」
「俺が過去に縛られているだと?」
「まさにそうであろう。現に今も弟子入りを断っておる」
天才さんは黙った。
「過去は忘れてはならない。しかし、囚われるのはもっといけない。だから、こやつを弟子に迎えるのだ」
「...いいだろう。おい、スターチス」
「は、はい!」
「明日から俺の店に来い。戦い方くらいなら教えてやる」
「はい!ん〜〜〜やっったあぁぁぁぁ!!」
「良かったですね」
「ありがとう、ルチェッタ、シオン!」
「礼は魚にしてくれ」
え、私金ないんですけど...
「それは私が用意しましょう。これが私のお礼ということで」
「本当に?!ありがとうルチェ!」
そう言って私はルチェに抱きついた。
「ちょっと、はしたないですよ!」
「あ、ごめんなさい。少し馴れ馴れしかったわねルチェッタさん」
そう言って、私はルチェッタから離れた。
「いえ、ルチェで構いません。それに抱きつくのもほどほどにしていただければ」
「わかった!あ、そういえば天才さん」
「なんだ?」
「名前なんでしたっけ?」
「まさか今まで知らなかったのか?」
「ええ、まあ」すごく恥ずかしくなってきた。
天才さんは少し考えて、
「アムネシアだ」
そう言った。
誤字脱字を軽く調べたら沢山ありました。まさか今までの章もすごいことになっているのでは?!
ルチェッタは結構前に出てきましたね。
前出てきた時と口調が違いますが、それは以前のだとなんて言えばいいのか分からない時があるのと、面倒なので普通にしました。後付け設定でも作ろうかな。




