厄災編第五章 予定通りと想定外
皆さんがこれを読んでいる時にはもう私は旅行に行っていることでしょう。と言っても一週間くらいなので、リアタイで見てる人以外には関係ないですね。ちなみにリアタイの使い方あってます?
人気の無い街並み。
そこに響くのは鉄と鉄のぶつかる音。
以前も似たシーンがあったが、今回はドタドタと謎の音が含まれている。
理由は大勢が走っているからだ。足並みはバラバラで息切れしていそうな声も聞こえる。
ちなみに俺が今何しているかと言うと、スイレンから走っている兵士守っていた。
これで音の正体が一度に二つも判明したな。
「もっと速く走れ!!」
「ぜえ...ぜえ...むちゃいわんといてください!」
普通走りながらぜえぜえとか言うか?少し変わっているな。
「危ない!」
「え?」
疑問な声をあげた兵士の後ろで剣が振り下ろされていた。
「う、うわああああ!」
だが、兵士に当たることはなかった。
勿論俺が守ったからだ。
「早く行け!」
「は、はい!」
スイレンはどうやら人が多く集まった場所、もしくは自分から素早く逃げようとしたものを重点的に追うようだ。
理由は分からんが、そのおかげで弓矢隊は狙われなかったし、今も尚武器を持って応戦している俺よりも、逃げている兵士達をターゲットにしている。
このおかげで陽動作戦が上手く行きそうだ。
俺が持っている武器は片手剣。
「...」
スイレンは黙ったまま、また兵士を狙って攻撃してきた。それを俺が守る。そして兵士から距離を取らせる。この繰り返し。
そして目的地に着くまでさほど時間はかからなかった。
「全員散開!」
先程まで走っていた兵士は散らばり、目的地の噴水の影から武装をした違う兵士が現れた。そしてスイレンを包囲した。
武装は片手剣、小さめの盾、全身甲冑だ。ヘルメット外から目が見えるほど、視野を良くしている。その兵士が40人
「...」
スイレンに驚いている様子はない。まるで初めから知っていたかのようだ。
「全力でやつを潰すぞ!」
「「「おう!!」」」
その瞬間予め掘っておいた文字が光出した。この謎の光は力を宿しており、それによってスイレンを弱体化させる魂胆だ。なぜ光るかはよく知らん。
「ほら、こっちに来てみろよ!」「ビビってんのか?!」「厄災様は名ばかりか?!」
まずは盾で、さっきまで走った兵士の体力の回復と、弓矢隊が来るまでの間の時間稼ぎだ。
スイレンはただ、周りの兵士を見るだけだった。しかし、隙はないようだ。
「...なんで何もしてこないんだ...?」
その一人の兵士が放った独り言は、強がって叫んでいる兵士も、俺も同じ疑問を抱いていた。
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十分過ぎる程の時間が経って体力を回復させた兵士と、弓矢隊がやってきた。リモとゼラも来たようだ。
これで準備は万端だ。
「いつでも行けるわよ!」
「こっちも、いつでもOKっす!」
「全員突撃!」
「喰らえ!」「くたばれぇ!」「しねぇええ!」
咆哮をあげながら兵士が突撃した。82名の突撃、41名の(味方に当たらないように)援護射撃。だが、一撃もスイレンには当たらなかった。
たった一振で十人を吹き飛ばした。そのまま使いで二振り。
「ぐわぁあああ!」「なんだ?!」「ああああ!足がああああ!」
その後一突きで遠くにいた弓矢隊を数人吹き飛ばした。
この一瞬で十数人の命が失われ、十数人が五体不満足となった。
「なあ、お前らは家で壁や天井を這いずり回る虫を見つけたらどうする?厚紙を丸めて叩くか?俺なら餌でおびき寄せて、その後一気に潰す。やつにとって俺達はその程度なんだろうな」
その時のスイレンは笑っているように見えた。
恐怖心が暴れ出すような。不気味な笑みだ。
「なんて力なの...」
「こんなの勝てるわけないっす...」
誰もが死を覚悟した。
誰だって死にたくない。今にも逃げ出しそうな兵士が何十人といた。
しかたない、俺も覚悟を決めるか。
「全員下がっていろ!軽傷の者は重傷者を担いで離れろ!あとは...俺一人でやる」
家で壁や天井を這いずり回る虫...何かとは言いませんが、いると嫌ですね。
次回は「厄災編第六章 仲間の意味」の予定です。




