厄災編第四章 開戦
これから1〜2週間に1回のペースで更新しようと思います。そうすれば遅れても気が楽になります。多分来月には3週間に1回のペースになります。
「見えてきたな」
今はあけぼの。つとめてと何が違うのか分からんが多分あけぼのだ。
「ねえ、弓矢隊って本当に意味あるの?」
「どういう意味だ?」
「相手は国が恐れるほど危険なんでしょ?こんなのでなんとかなるとは思えないんだけど」
「ならスイレンはどうやって弓を無力化すると思う?」
「そんなのどうでも良くない?」
「避けるのか、盾などで防御するのか、そもそも当たっても痛みを感じないのか、刺さっても意味がないのか、気になるからな」
「そんなことで人が死なないといいけどね」
「なんで我も弓を引かねばならんのだ...」
シオンが愚痴を言っている。擬人化されて弓と剣の訓練を無理やり受けさしたからだ。
「嫌なら剣で戦うか?」
「剣よりかはこっちの方がマシだ」
「そうか、なら文句を言うな」
「あんたってシオンに辛く当たりすぎよね。人じゃないからって何しても言い訳じゃないのよ」
リモは俺に辛く当たりすぎではないのか?
そんな他愛もない話をしていたら、望遠鏡を持った兵士の声が響き渡った
「見えたぞ!スイレンが見えた!」
「作戦第一段階!全員持ち場につけ!弓矢隊は一本だけ持って残りは矢筒に入れておけ!今全部使い切る必要は無い!ゼラ、当てるだけでいい。危ないと感じる前に逃げろ」
「危ないと感じる前っすか?まあよく分かんないけどわかったっす!」
スイレンが肉眼でも見える距離までやってきた。
「あ、あれは...」
「あの顔...」
「王子様...」
俺のドッペルゲンガーだと本気で考えたね。とてもそっくりだった。
ただ違うとすれば、不気味な笑みをしていることくらいか。
「相手の顔なんて気にするな!奴は災害だ!手加減はするな!」
「「「はい!!!」」」
こっちに近づく速度は人が走ったくらい。
あれなら馬で逃げれば楽勝だな。
「弓を引け!」
弓矢隊が一斉に弓を引く。弓ってものは引っ張ったままでいると、手が疲れてぶれやすいからあまり気乗りはしないんだがな。一斉射撃のために我慢してもらおう。
怯えているのか、ゼラの弓は大きく揺れている。呼吸も荒い。目も焦点が合っていないのか、揺れている。
「大丈夫か?」
「大丈夫...には見えないっすよね...」
「一度冷静になるんだ。お前なら出来ると強く思い込め。思いは人を強くする。それにお前が外しても戦闘の決定打にはなり得ないからな」
「師匠って安心させるのがのが苦手なんすね。でも、少し冷静に慣れたっす」
苦手?俺は完璧だと思ったんだがな。
だが、ゼラに笑顔が戻った。
俺は大きく手を振り上げた。
振り下ろしたら射撃の合図だ。声もだすがな。
スイレンが近ずいてくる。
「まだだ」
スイレンが弓矢の最長射程圏内に入った。
「まだだ」この距離では命中不安でそんなに飛ばせないやつだっている。
スイレンが十分な距離に近ずいた。
「今だ!」
総勢42名による一斉射撃。結果はと言うと。
「見えなかった!」
「弾いたのか?!」
「矢が自ら離れていった!」
全て当たらなかった。軌道的にはほとんどが当たるはずだった。
だが、軌道がそれた。まるで透明なバリアがあるみたいだ。
「作戦変更!第二段階!馬に乗って指定の位置まで誘導するぞ!」
指定位置が今回の戦闘の肝だ。絶対に誘導を成功させないといけない。
門の上から弓を射抜いていた者達が皆馬に乗った。他にもリモが鍛えた体力バカ軍団が、もしものためにいる。
「行け!ん?なぜ進まないんだ?」
馬は全員ピタリを止まっていた。動く気配がない。
「まさかスイレンの恐怖のせいで動けないのか?」
これのせいでスイレンから逃げられなかったのか?走って逃げれば良かったのに。
まさかもしものための体力バカ軍団が役に立つとはな。
門が壊された。あの門を一瞬で壊すとはな。
「体力バカ軍団、入って指定の位置まで誘導するぞ!お前らはそんな甲冑着てても走れるよな?」
「勿論ですよ!」
「甘く見ないでください!」
「よーし、スイレンと鬼ごっこなんてそう簡単に体験できるもんじゃねえな。ワクワクしてきたぜ!」
「スイレンだか水晶だか知らないけど、捻り潰してやるわ」
運良くスイレンは俺を見ている。門の近くで隠れている弓矢隊には気づいていないようだ。
「行くぞ!」
「「「了解」」」
次回は「厄災編第五章 戦場の鬼ごっこ」の予定です。




