王都内乱編第九章 ゼフィランサス
ゲームが楽しすぎます。最近のゲームって凄いですね。やつはとんでもないものを奪っていきました。私の心です。
街中にうるさいほどの鉄と鉄のぶつかる音がした。
最初はぶつかる音は道路工事並に沢山響いていたが、少しずつ音の数が減って今では斧で木を伐る時のペースだ。三秒に一回程度だ。
音の元凶を見ると剣と剣がぶつかり合っている。
片方はとても乱暴な動きだ。無駄が多いが、スピードと腕力で補っている。
もう片方はさっきと逆で無駄がない。とても洗礼された動きだ。しかも三人もいる。にもかかわず押されているのは基本性能の違いだろう。
もし誰か見ていたら自分が弱いのではなく、敵が桁外れだと言い訳をしたに違いない。
「くそ!どんどん強くなってやがる!」
「無駄口を叩く暇があるなら、戦闘に集中して下さい!」
「言われなくてもわあってるよ!」
嘆くような叫びと皮肉混じりの声が鉄と鉄のぶつかる音に負けないほど響いた。
相当まずい状況なのだろう。
一方で乱暴な動きの方は至って平然とした表情でいる。
まるで全てのことが他人事であるかのように。
「...少しまずい予感がする」
「どうした、ガーベ!」
「やつの懐に入る時は気おつけた方がいい」
「ガーべの予感はよく当たりますからね、気おつけないといけませんね」
「懐に入るなっつっても、このままだとジリ貧だぞ!」
「それはそうだが...」
会話をしているが、乱暴な方がその間待ってくれるはずもなく、突撃してきた。
「くそ、面倒なやつだ!」
そう言ってゼフィは迎え撃つべく突撃した。
乱暴な方がいきなり剣を振った。が、空ぶった。剣を振って当たらないことは普通にある事だ。
ただ、問題なのは絶対に当たらないところで剣を振ったことと、いきなり少し後退した事だ。
と言っても何度も同じ行為をしており、それが乱暴に呼ぶにふさわしい理由かもしれない。
(いつも思うが、こいつは何をしているんだ?)
ゼフィはそう思いつつも足の速度を緩めず、突撃して、敵を間合いに入れた。
「喰らえぇ!」
そう叫んだ瞬間ゼフィはゾッとした。
攻撃しているのはゼフィだ。ゾッとする事など何も無いはずだ。
しかし、だからこそ、そんな状況に置かれていながらも薄気味悪い笑みをした敵にゾッとした。
(くそ、なんで笑ってられるんだ?!)
一瞬たった後に何故笑ったかが、理解できた。しかし、それはより一層理解できないことが起きたからだ。
突然体が切れた。
切られたのではない、傷からしてきられたのだろうが、見えなかった。
「な!?」
それがゼフィの最後に発した言葉だった。
と言っても言葉にならない叫びは数秒間続き、首を跳ねられる事で終わりを告げた。
「ゼフィ!!」
「何が起きたんだ...?」
二人がどれだけ同様しようが、彼が立ち上がることはなく、彼を殺した敵が待っているはずがなかった。
「ガーべ、一旦引いてください!やつの力が分からない以上突っ込むのは危険です!」
「了解...」
ガーベラは一旦デンドロビウムの方まで引いた。
それに対してやつは少し奇妙だ。
追いかける訳ではなく、引く前にガーベラがいたところに向かって剣を振った。
「...?!」
その瞬間ガーベラが切れた。ゼフィの時と同じだ。
「ガーベ!?お前、何をしたんですか?!」
その質問答える者はいない。まるで質問など聞かれていなかったかのように前進する者と、その場で倒れる者と、明らかに混乱している者しかいない。
「く...無駄だとしても...」
そう独り言を吐き出してチャクラムを投げた。
乱暴な方は剣でガードするべく剣を振った。
しかし、また奇妙なことがある。
剣を振るタイミングが早すぎる。剣は空を切るだけでチャクラムには当たっていない。
このままでは体に当たるのは確実だ。
(まだなにか残しているとでも言うの?)
その疑問も一瞬経てば理解できた。
チャクラムがいきなり不自然な方向に飛んで行った。まるで剣で弾かれたように。
(やつの力の正体がやっとわかった!)
「まさか未来や過去を切ったのですか?」
ゼフィが切られる前にやつはその位置に向かって剣を振っていた。
ガーベラが引く前にいた位置に向かって剣を振った。
チャクラムはやつがいまさっき剣を振った位置から弾かれたように軌道を変えた。
もしそうなら今までの奇妙な動きに全て合点が行く。
デンドロビウムは乱暴な方の力の正体を完璧に把握した。
...だからなんだと言うのだ。
デンドロビウムは正体を把握したと同時にもう一つの事実も理解した。
その力に対して自分は何も対抗策がない事実を。
次回は「王都内乱編第十章 what am I」の予定です。




