いつもの風景
主人公の日常を描いた章です。ストーリー的には見なくてもいいです。
あ〜仕事したくないな〜。でもやらないといけないよな〜。
なんて事を考えていたら扉が開く音がした。勿論店の入口だから客が来た事になる。
「おーい、あんちゃん。またこの鍋の底が壊れっちまったぜ。なおしてくれ」そう客が呟いた。
「おいおい、これで何度目だ?勘弁してくれよ」客に対して失礼な物言いだ。
「しょうがねえだろ。普通に使ってたらこうなったんだから」
客が手に持っているのは底が壊れている鍋だ。壊れ方としてよくあるが、早すぎる。
前回なおしてから、どれだけたった?少なくとも1ヶ月は経っていない。
確かこいつはこの通りで飲食店を開いていたな、それにしても早すぎる。
「まあ壊れたからしょうがない、なおすよ」
「助かるぜ、あんちゃん。お前の腕は一級品だからな!...まあ口の利き方はともかく」
「褒めてもなんも変わんないぞ。ん?今なんて言った?口の利き方がどうとか」
「いや、なんでもない」
ちなみにあんちゃんはこの客が俺につけたあだ名だ、全く味気のないあだ名だ。そもそも店主側が呼ばれるような呼び方じゃない。
呼び名はともかく、鍋をなおすのは簡単だ。叩いて削って磨くだけ。
鍋をなおすのは普通「鋳掛屋」がする事だが近くに鋳掛屋が通らず、以前言ったように俺の腕が一級品と称されるからだ。
おい、今自画自賛する可哀想な奴だと思っただろ。
「ほら、終わったぞ。」
「おー!いつにも増して凄い出来栄えだ!」
「料金はいつもと同じで」
そう言ってあいつは金を払ったあと出ていった。それにしても疲れた。簡単とはいえ、疲れる。少し休みたいな。
そう思った矢先扉がまた開いた。
「店主〜!私の家の屋根に穴があいちゃったから、治して!」
「はぁ?何があったんだよ」
「とにかく来て!」
いつも大変な毎日だ。少しは休めせてくれ。
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「ほら、着いたよ」
「何があったんだ...」
本当に屋根に穴が空いている。まるで隕石が落ちたみたいだ。
「しょうがない、治すかぁ」
「頼んだよ店主。治らずに夜が来たら、大変だからね」
まず屋根の上に登って瓦を外し、屋根を治してまた瓦を付けた。瓦ってやつは部分的に外せれない。少し語弊があるが、一度全部外さないと付け足せれない。
だからとっても疲れた。寝たい。
「ほら、治したぞ」
「ありがとう〜!仕事が早くて助かるわ!これはお礼ね」
ふむ、彼女は果物の畑を持っていたな...ありがたく頂いておこう。
「お、にいちゃんいい所に。これから店によろうと思ってたんだ」
後ろからそう言われたから振り向いてみた。
げ...こいつはいつも害獣駆除を依頼するお得意さんだ。害獣駆除大変なんだよなあ、噛まれるし爪で引っ掻いてくるし。
「また害獣駆除か?」
「話が早くて助かるぜ。あいつらまた小麦を荒らしやがる」
「でも害獣駆除か...めんどくさいからなあ」
「今回も礼として小麦をやるよ」
「喜んでお受け致しましょう」さっきまでのやる気のなさは何処へ行ったのやら。
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「駆除してきたぞ。だが、縄張りの主がいなくなっただけで、すぐに違うやつがやってくるけどな」体中も服もボロボロのまま、戻ってきた。
「お、おう。大変だったんだな...」
そう言って小麦と料金を渡してきた。
もう帰ろう。体中ボロボロだから今日は店じまいだな。
「おーい、万事屋!ちょっといいか?」
「もう今日は店じま」「いいから!話はあと、早く来てくれ!」
全く、この国は早く労働基準法をつくるべきだ。
お気ずきかもしれませんが、主人公の名前が出てきません。一様決まっているので、今後出すつもりです。
作中に出てきた鋳掛屋と言うのは、昭和時代までありました。仕事内容は穴の空いた鍋などを治す事です。話によると、江戸時代には蕎麦職人ほどいたぐらいポピュラーな仕事だったようです。
それと段落替えの横棒が1つ多かったり少なかったりしてたので、そこはご了承ください。