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鳴かぬなら 信長転生記  作者: 大橋むつお
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87『迎えが来ていた』

鳴かぬなら 信長転生記


87『迎えが来ていた』信長 





 学校まで二キロという三叉路で迎えが来ていた。



「ご苦労でした!」


 かけた眼鏡を振り落としそうな勢いで頭を下げたのは織部だ。


「うむ」


「出迎えありがとう。やけんど、学院の正門前じゃなかったが?」


 乙女会長が微笑みながら声を掛ける。武蔵と市は、面識がないせいか馬を停めただけで前を向いている。


 不愛想という点では引けを取らない俺だが、こういう場合は、最低でも「うむ」とか「ああ」とかぐらいはあってしかるべきだろ……と、思ったら、二人とも学園に通じる西の方の道の向こうに首を向けた。武蔵はカラコンも外して、いつもの三白眼で脇差の柄に手を掛けている。


 そこに居たって、俺も気づいた。


 道路わきの茂みから微弱ながら殺気を感じる。


「リュドミラ、出てきなさい。あんたは身を隠いちゅーだけで殺気を発するがやき」


 乙女が声を掛けると、おずおずと茂みから出てくる学園の制服。


 プラチナブロンドに通学カバンを背負った姿は、まるでリコリスリコイルのキャラみたいだ。


「まあ、あんただったの! 意外なお出迎えだけど、嬉しい。ありがとね!」


 市は、以前カラミティー・ジェーンから銃を借りて遊んでいたのだが、その銃が、このリコリコ女だ。


 同じ転生学園、あれから仲良しになったのか? 馬から下りて、旧交を温める妹、相手はいささか持て余し気味なのもおかしい。


 たしか、フルネームはリュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ。名うてのスナイパーだぞ。


「任務を帯びました、みなさんの帰還を確認したのち任地に向かいます」


 市を引きはがして、リュドミラは乙女に正対する。


「任務? うちは知らんが」


 乙女が首をかしげる。学園の任務なら生徒会長の乙女が承知していないはずがない。


「緊急なので、巴(巴御前)副会長の指示です」


「ああ、会長不在時の緊急マニュアルかぁ……やけんど、そこまで緊急というがはどういうことなが?」


「うちの今川会長からの要請です」


 織部の眼鏡が光る。


「義元の要請だと」


「はい、織田姉妹が帰還されるので、諜報の間隙を作ってはならぬとおっしゃっておられました」


「であるか」


 こちらの報告も受けずに、次の偵察隊というのは、ちょっと面白くないが。戦略的な指揮を執るものなら、ありうる判断だ。


「むろん、お二人のお迎えをしたうえでということなので、このようにお待ち申し上げておりました」


「是非も無し」


「では、行ってまいります」


「リュドミラ!」


「なに?」


 不登校だった娘の久々の登校、それを見送る母親のように最後の一言を伝える乙女。


 いささかくどい気がしないでもないが、脱藩する龍馬を見送る時も、このようであったのだろう。英雄の周囲には、このように情の厚い者がいるものだ。


 俺は……市も無事だった。まあ、良しとしておこうか。


 さあ、甘いものを食って風呂に入ることにしよう。





☆彡 主な登場人物


織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生(三国志ではニイ)

熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま

織田 市        信長の妹(三国志ではシイ)

平手 美姫       信長のクラス担任

武田 信玄       同級生

上杉 謙信       同級生

古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ

宮本 武蔵       孤高の剣聖

二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま

リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ

今川 義元       学院生徒会長

坂本 乙女       学園生徒会長

曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹

諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相

大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん




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