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鳴かぬなら 信長転生記  作者: 大橋むつお
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74『函谷関』

鳴かぬなら 信長転生記


74『函谷関』市   




 そいつは、崖の上から団扇みたいなのヒラヒラさせながら降りてくる。


 ゾロッとしたワンピースみたいなの上に、それよりも裾の長いガウンみたいなの着て、薄ら笑い浮かべながら降りてくる。


 こいつ、ルックスはまあまあなんだけど、きっと体の線に自信ないんだ。自信があったら、あんなゾロっとしたの着ないと思う。茶姫とかの三国志の美人は、みんなミニスカで、胸元も大きく開いたの着てるし。


 むろん、わたしの近衛騎兵のコスだって、胸甲の下は黒のミニスカにニーソで決めてるし。茶姫はガーターベルトの留め具を赤いルビーで際立たせている。


 フフフ


「シイ、何がおかしい?」


「ううん、なんでも……」


 勝った! あ、いや、そいつは大したことないと思った瞬間、気まぐれな谷風が噴き上がってきた。


 ブワア


 谷風は、そいつのガウンとワンピを遠慮なくまくって、胸元まで露わにしてしまった!


 オオ( ゜Д゜)!


 遠慮のないどよめきが起こる。


 面積の少ない下着を付けた体は、そこらへんのグラドルも真っ青てくらいにイケてる。


 こいつ、谷風まで計算に入れて崖の上に立っていたのなら、ちょっと策士だ。


 一秒にも満たないアクシデントを平然と受け流し、茶姫の前に立つと、クールな笑顔で挨拶した。



「蜀の丞相を務めております、諸葛茶・孔明でございます。わざわざの起こし、主・玄徳に成り代わりご挨拶申し上げます」


「これはこれは、丞相殿の御高名はかねがね伺っておりました。その丞相殿自らのご挨拶をいただき痛み入ります。わたくしは魏王・曹操の妹にして騎兵師団長を務める曹茶姫です。転生国打通進軍の帰路、国王・劉備玄徳殿に領内通過のご挨拶いたしたく参ったしだいです。よろしく国王陛下にお取次ぎのほどを願います」


「よくぞ参られました、転生国打通の噂は、この蜀にも届いております。主・劉備玄徳も、あの鮮やかな打通作戦には大層な関心をもっております。いずれは、使者をたて、相応のご挨拶のうえご高説賜らんと申しておりました。さっそくにご案内申し上げたく存じます。これ、関羽、張飛、心してご案内申し上げよ」


「「承知!」」


 こうして、筋肉バカの二将軍に先導されて、函谷関に向かう我々であった。



 グゴゴゴ……



 高さ66メートルの城壁に設えられた門扉は、それだけで50トンはあろうかと思われる黒鉄の逸物で、開く音が、まるで地中を龍が這うごとくである。


 関内に入ると、すでに検品長が馬を引き連れて入関していた。


「蜀の許可は得ています。ここからは、騎乗してお進みください」


「茶姫の部隊は血の巡りがいい」


「そうだね、言いたかないけど、ニイチャンとこのサル(秀吉)とかイヌ(前田犬千代)のようだ」


「成都は広い都ですが、これだけの騎馬部隊を収容することはできません。関羽に案内させますので、東の牧にお待たせください。都城には百騎のみお連れくださいますよう」


「心得た丞相殿。検品長、百騎の近衛を残し残りを牧へ移せ」


「茶姫」


「なんだニイ?」


「俺も牧にまわってからの同行でいいか?」


「構わんが、どうしてだ?」


「俺たちのものではない蹄の跡が……ほら、あんなについて、牧の方角に続いている」


「備忘録!」


「はい、備忘録、これに」


「蜀の役人にあたって、この後の段取りを決めてこい」


「はい」


「ニイ、備忘録より報告を聞いてから行け。劉備との面接には立ち会え」


「承知した」


「シイも一緒に行く!」


「フフ、シイはお兄ちゃん子なんだな」


「ち、ちがうし(~_~;)!」


 茶姫も一言多い!


 

☆ 主な登場人物


 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生

 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま

 織田 市        信長の妹

 平手 美姫       信長のクラス担任

 武田 信玄       同級生

 上杉 謙信       同級生

 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ

 宮本 武蔵       孤高の剣聖

 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま

 今川 義元       学院生徒会長 

 坂本 乙女       学園生徒会長 

 曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長)弟(曹素)


 

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