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鳴かぬなら 信長転生記  作者: 大橋むつお
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60『市の堪忍袋は破裂寸前』

鳴かぬなら 信長転生記


60『市の堪忍袋は破裂寸前』信長  





 ギギギギ……


 歯ぎしりの音まで聞こえ始めた。市の堪忍袋は破裂寸前だ。


 相手は百余りの輜重部隊、俺ひとりが逃げるのは造作ないことだが、切れた市を連れていては難しい。


 目玉を左右に二ミリ動かせて観察。


 左翼がやや薄い。瞬間に二人を倒せば道は開ける。


 市が付いてこなければ……目の前の曹素を倒すしかない。曹素を倒せば、市は付いてくる。


 決めた!



 待てっ!



 踏み出そうとしたとき、森の向こうから声がかかった。


 曹素が嫌な顔をして振り返る。


 ドドドドドド


 蹄の音が轟いたかと思うと、朱具足に統一した騎兵の一群が迫って来る。


 具足の色と、蹄の勢いは信玄の赤備えに似ているが、先頭の大将は女だ。


「わたしの近衛兵になんの御用か……お兄ちゃん?」


 お、お兄ちゃんだと?


「お、お前の近衛だというのか?」


「ああ、そうだよ。酉盃で採用したばかりで、すまん……名前はなんであったかな?」


 瞬間、躊躇していると副官が耳打ちした。


「そうそう、職丹衣しょくにいと妹のしいであったな。豊盃で編入させる予定だったが、いやいや、朝駆けしてきてよかった。あやうく同士討ちになるところだった。まだ、編入前で陣中作法も教えていない。なにか無礼があったのなら、将たるわたしの責任だ。この通り謝るよ、ごめん(*´人`*)!」


「あ、いや、そっちから謝られてはな(;'∀')」


「それにしても、お兄ちゃん、朝っぱらから商人のナリで隊商の真似とは、これも訓練なのかい?」


「あ、ああ、そうだ。敵地に入れば擬装して輸送任務にあたることもあるからな。そのための訓練だ」


「なるほど、隠密の輸送訓練なんだ。だったら、途中でもめ事なんか起こしてちゃダメ……かな?」


「あ、いや、なに……夕べ、不埒な兵が酒の勢いで女にイタズラした者が居ると聞いてな。そこに、不用心な女二人を見つけて、親切心から注意してやろうと思ったら……」


「そっかそっか、ちょっとした行き違いなんだね。ごめん、やっぱあたしの早とちりか。テヘペロ(๑´ڡ`๑)」


「そ、そうだ。まあ、よく躾けておくようにな」


「女にイタズラした兵にもね……」


「いくぞ、みんな!」


 回れ右して、曹素たちはゾロゾロと酉盃に戻って行った。


 ニコニコの笑顔で見送る赤備え。振り返ると鬼の形相……かと思いきや、相変わらずの笑顔で馬を寄せてきた。


「どうだい、ほんとうに曹茶姫そうさきの近衛になっちまわないかい? 君たちなら娘子憲兵ではもったいない」


「え、えと……」


職市しょくしい、いや、シイちゃん。きみの困った顔はいいねえ。ごめん、いきなりじゃ困るよね。その気になったら、わたしの本営まで来て。そうだ、豊盃の通行手形を渡しておこう」


 茶姫が目配せすると、副官が、馬を下りて手形を渡してくれる。それも「どうぞ」って言ったし。


「時間があれば、このまま豊盃に戻るんだけどね。バカ兄貴のことも心配なんでね。まあ、夕方には戻るさ。ああ、森を抜けると、ちょっとした崖になっていて、いい風が吹いている……じゃあね」


 ピシリ


 五騎同時に鞭を当てると、軽やかな蹄の音をさせながら酉盃に駆けて行った。


 崖の手前で連絡用の紙飛行機を飛ばすと、姉妹二人で寝っ転がって、この先のことを考えた。


 見上げた空……腹が立つほど、ゆっくりと雲が流れて行った。




☆ 主な登場人物


 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生

 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま

 織田 市        信長の妹

 平手 美姫       信長のクラス担任

 武田 信玄       同級生

 上杉 謙信       同級生

 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ

 宮本 武蔵       孤高の剣聖

 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま

 今川 義元       学院生徒会長 

 坂本 乙女       学園生徒会長 

曹  茶姫       曹軍女将軍

 曹  素        曹茶姫の兄





 

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