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鳴かぬなら 信長転生記  作者: 大橋むつお
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42『茶席中継』

鳴かぬなら 信長転生記


42『茶席中継』  






 放送部と交渉しました!



 放課後の学食で『天ぷらきしめん大盛り』をトレーに載せてテーブルに着こうとしたら、腋に何やら挟んで、味噌カツ丼特盛を左手に、右手に箸を構えた格好で織部が隣に腰を下ろした。


 昼飯の味噌カツ丼を食べていたら、俺の姿を見つけたので、そのまま席を移してきたのだ。


 それまで居たテーブルにはトレーが載ったままで、通路には味噌カツの味噌やらご飯粒が落ちている。


 よっぽど、俺に伝えたいことがありそうなので「落ち着いて食え」と注意して、いっしょに昼飯にする。土曜の半日授業なので、しっかり昼飯を食べて、例の茶席の結果を待とうというわけだ。織部も同じで、学食に入ってきた俺を見つけて、慌てて寄ってきた。


 ツルツル


「で、なんで放送部なんだ?」


「茶席の中継です!」


 モグモグ


「ああ、生徒会長との?」


 ツルツル


「はい、例のアクセントの件で、同席は出来ませんから、カメラを仕込んで中継……、あ、きっと、もう始まってます」


 そう言うと、味噌ダレを頬っぺたにくっつけたまま、腋に挟んだタブレットをテーブルに置いた。



『……と言う次第なんだ、会長、よろしく頼む』


 信玄は頼みごとをしても、なんだか偉そうなのだが、少しも嫌味とか威圧感にはならない。


 大柄で、ちょっとふくよかな体形もあるんだろうが、持って生まれた押し出しなんだろう。


『ちょっと待ってください……』


 前置きすると今川生徒会長は、美しく茶を喫する。


 茶碗を持つ手も、白魚のような指先も、喫するにつれてコクコクと動く喉も顎も、どこをとっても学院一番の評判も高き美少女のそれだ。


「信長先輩もなかなかのものですよ(^_^;)」


「世辞はいい、今川は源家嫡流に繋がる家だ、やはり年月に磨かれた美しさは格別だなア」


「は、はい、いかにも」


 転生学院はロン毛の者が多いが、ヨシモトは姫カットがメチャクチャ似合って、そのまま大河ドラマの姫役が務まりそうだ。


『良いお服加減でした』


 お約束の茶席のあいさつなのだが、茶器のさばき方から目の伏せ方、観音菩薩のような微笑、どれをとっても、一級品だ。


『いやはや、ことの重さに、いささか急いてしまった。わたしも、まず一服……』


 信玄が茶碗に手を掛ける。美少女にしては、やや大きな手なのだが、包み込むような温かさとたくましさがある。


 並んで控えている謙信は、一服目を喫し終わって、この場の主役を信玄とヨシモトに譲っている。


 茶席の穏やかさから察すると、ここまでは謙信が主導していたんだろう、例のアクセントも問題になることなく、みなで、二服めの茶を喫するところのようだ。


『ご懸念のほどは承知しましたが、ことは学院の枠を超えているように思います』


『いかにも、三国志の侵入は、扶桑全体で受け止めなければならない懸念ではある……』


『しかし、信玄さん、大っぴらにしてはいたずらに不安をあおってしまいますよね』


『やはり、特別予算は……』


『むつかしいでしょう』


『そこをなんとか……同じ源氏の流れ、斟酌してはもらえないだろうか』


『…………』


『ヨシモト殿』


『いまも申した通り……と言っては、身も蓋もありませんね……ところで、仮に、偵察に出るとして、信玄さんや謙信さんは、どなたを派遣しようと?』


『それは、扶桑の一大事、率先垂範、わたしと謙信で……』


『それはいけません。お二人は転生学院の重鎮、お二人が偵察のため姿を消されては、学院に動揺が走ります』


『しかし、吉本どの……』


『アン……(//∇//)』


 ちょっと色っぽい声を出して眉根を寄せる会長。信玄はアクセントを間違えたのだ。


『これは申し訳ない(^_^;)』


『わ、分かりました。学園の会長とも相談して、早急に答えを出しましょう』


『吉本殿!』


『アン……(//∇//)』


『あ、すまん』


『あ、いえ、ですから信玄さん』


『だから、ヨシモト殿』


『アン(//∇//)』


『あ、いやすまんすまん(^_^;)』


『信玄、会長もご理解いただいた様子、これくらいで』


 謙信が膝立ちになって信玄の袖を引く。


『会長、このくらいで』


 とうとう三成が止めに入った。


『そ、そうですね、ちょっと目眩が……』


『それでは、これにて……』


 利休がしめて、ホッとした空気が茶室に流れる。


 一礼し合って、会長が立ちかけ……よろめいてしまった。


『吉本どの!』


『アア~(//∇//)』


 機敏に会長を支える信玄……しかし、止めにアクセントを間違えてしまい、会長は美しく手足を痙攣させて気を失った。


『会長!』


『中継を切れ!』


 プツン……



 大丈夫か?





☆ 主な登場人物


 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生

 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま

 織田 市        信長の妹

 平手 美姫       信長のクラス担任

 武田 信玄       同級生

 上杉 謙信       同級生

 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ

 宮本 武蔵       孤高の剣聖

 今川 義元       生徒会長 

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