能力値が素晴らしかったみたいです。
遅くなりましたが、続きです!
こっちの世界に来てからというもの、山奥で修行に明け暮れていたので、街には初めてやってきたのだ。
周りを見渡せば可愛らしい女の子や、艶やかな女性、アイドル顔負けの婦人など選り取りみどりである。これだけでも街に来てよかったと思ってしまうのが、俺の悪いところである。
と、そこでふと気になったことをアーサーに確認する事にした。気になったこと、それはこの街の名前だ。
あの街やこの街なんて呼ぶのは失礼だし、何より呼びづらい。
「この街か?ここは大都市パーラメントだ。何でもこの街やその他の地域全て、異世界から来た人間が命名したらしい。」
パラメント…。パーラメント…。ふぅ。俺は思わず舌打ちとため息をはいた。
すっかり忘れてたであろうが、俺はこう見えて元喫煙者だ。この世界に来てからはその存在を確認できなかったために必然的に禁煙生活をしていたが、名前を聞くと急激に吸いたくなるのが人の性。しかも、俺が中々愛煙していた銘柄が名前になっていると余計にだ。
異世界から来た人間、間違いなく喫煙者だったのだろう。街の名前にしやがって。俺は会ったことも、この先会うこともないであろう人物に対して、少しだけ恨みをもったのは内緒の話である。
…と、ここで再び俺は考える。いせかいじんがつけた?ちょっと待て?異世界からの人間を認知している世界なのか、ここは?てことは、俺があの時素直に名前を告げていても特にややこしい事にはならなかったのか?
あー、だめだ。考えれば考えるほど虚しくなりそうだ。
名前なんて聞くんじゃなかったと、少し後悔しながらもアーサーに礼を述べ、ギルドを探すことにした。
待ち行く人に訪ね、ギルドの場所を教えてもらい、俺とアーサーはギルドに到着した。
ギルドカードには能力値なるものがS~Fでランク分けされ、反映されるそうだが、ぶっちゃけ今後気にすることはないと思う。まあ、念の為、一応確認はすることにしようと思う。
全然、気になったからというわけではない。いや、本当だよ?
ギルドに入り、受付のカウンターに行くと若い溌剌とした女性が登録までの案内をしてくれた。
この辺はどこか、携帯ショップに似ているな、なんて思いながら説明に従いカードを作成していく。
名前、年齢、性別、を記入したあと、水晶の様なもので能力を測るそうだ。
言うまでもないが、名前を見たとき受付さんは驚いていた。神様と同じ名前って珍しいんだなと、改めて実感したのである。
そんなやり取りをしたあと、俺はソワソワしながらも、平生を装い、水晶に手を翳した。
水晶に映し出された能力が次々にカードに記入されていく。
そして全てが記入され終わったあと、俺のカード作成を案内していた受付さんが驚嘆の声を洩らした。
「これはすごいです!なんとも素晴らしい能力です!剣術、魔法の適性が共に高ランクの方は今まで見たことがありません!」
きたーーーーーーーー!!!!受付さんの声を聞き、俺は心の中で歓声をあげた。
異世界名物と言っても過言ではない、最強クラスの能力値が表示されるシーンである。最近ではハズレスキルのはずが実は最強なんて設定をよく目にするが、やっぱり能力値が高い方を望んでいた俺としては最高の展開である。能力値なんて、と口では言っていたが、その実変な能力値だった場合の保険をかけていたのだ。
だがしかし、杞憂に終わった今、俺はものすごく能力値に興味が湧いていた。
そして受付さんからカードをもらい、すぐ様目を通した。
ちなみに、言葉は通じるが、字は全く読めず、修行と共にこちらの練習をしていたのは、言うまでもないことである。
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ギルドカード
名前:ペーパー 年齢:23 性別:男
能力値
剣術:A 魔術:A 話術:B 秘術:A
幸運:B 健康:A 肉体:B 創作:B 勘:A
取得能力
自然回復、魔力感知、危機察知、居合抜き、
初期魔法各種、原始魔法:覇気
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年齢に関しては適当に社会人一年目くらいにしておいた。
と、そんなどうでもいいことは置いといて、やばくね?正直予想を遥かに上回っていて引いてるんだけど。何この能力。スキルも含めてヤヴァイ。あと、ちょっと嬉しかったのが居合抜きのスキル。こんな技を使うと現世ではパクリだなんだと言われたが、ここでなら堂々と真似をすることができる。これはパクリではなく、真似なのだ。学びとは真似びと言うように、賢い者や強い者から真似て学ぶことは何もダメな行為ではない。
俺は誰ともわからぬ人に心の中で必死に言い訳をしておいた。
居合抜き、今日中に使えるようになりたいので、後でアーサーに付き合ってもらうことに俺の中で決定した。アーサーなら、多分引き受けてくれるだろう。
そしてまた気になったのがアーサーの能力値である。
俺の剣術がAランクということは、俺より強いアーサーは更にすごそうだ。
まあ、アーサーは強引に行けば見せてくれるだろうし、後で確認しようと思う。
ギルドカードを無事に発行し、俺はアーサーと共にギルドを後にした。
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それから宿を探し、チェックインを済ませ、俺はアーサーを連れて街はずれの広場に来ていた。
俺は取得していたスキル、居合抜きを試そうとしていたのだ。
「お願いはしたけど、本当にいいんだなー?」
「ああ、構わん。初めて見る能力だが、何とか見切ってやるさ!」
何故、俺がこんなことを聞いたのかと言うと、簡単な話で、木刀を持ってきておらず、刃がある剣で練習するからである。
俺が持っているのは、アーサーの予備の剣で、修行のときにもらったのである。
さて、そんなことは置いといて、、、俺は逸る気持ちを抑えながらスキルの使い方を学んでいた。
魔法はなんとなくで使っていたのだが、体術系のスキルは目の前に専門家が居るので、失敗しないためにもしっかり聞いておいたのだ。
アーサー曰く、魔法系のスキルはイメージが重要で、そのスキル名から想像したものにより近いものになるらしい。とはいえ、初級魔法で上級魔法をイメージすれば、魔力を制御することができなくなり、暴発してしまうそうだ。実際、顔馴染みの魔法使いが2、3回黒焦げになったのを見たと笑いながら言っていた。気をつけようと思う。
そして、今回練習する体術系のスキルはとにかく出してみないことにはわからないらしく、戦闘でいきなり使用するにはリスクが大きすぎるため、大抵の冒険者は先に試し打ちするらしい。
俺はただ使ってみたかっただけなのだが、この世界においては普通のことであるようだ。
てか、冷静に考えたらスキルのことを全く知らない、ほぼ使えない俺がよくもまあ初級魔法と剣術のみで魔物を倒してきたものだと、鼻が高くなっていたのは秘密である。
それに、体術系は試し打ちと言っていたが、俺が持つスキル、居合抜き…打たなくてもイメージが湧いてくる。棒無料動画アプリで似たようなシーンは何回も見てきた。なんかこう、腰に剣をセットして、振り抜く感じである。多分俺の想像は、皆さんとほとんど同じであることは断定できる。
俺はアーサーに声かけ、剣を腰に添えて右足を前に出し、少し屈んだ。
行くぜ?俺の超絶かっこいい居合抜き、とくと見よ!
ニヤニヤしながら俺が放った居合抜きは、俺の手を傷つけるだけで不発に終わったのは、また次のお話で説明しようと思う。