強すぎだよ、本当に。
仕事がバタバタしてたので投稿が遅れました。
木刀がぶつかり合う音が鳴り響く。
俺は死ぬ気の猛攻を繰り広げているが、アーサーは軽くいなしてくる。
あー、やばい。勝てる気がしない。無理だこれ。
なんて弱音を吐きそうになる所をぐっと堪えて、攻撃を仕掛ける。
単純な剣術の勝負なら、俺は絶対勝つことなんてできない。が、俺は全てをもって、アーサーに勝利するのである。
そう、密かに練習していた魔法も駆使するのだ。
俺は木刀を両手持ちから片手持ちに変え、勢いよく突っ込んだ。
「うおおおおおお!!!!」
「万策尽きたのか?闇雲に突っ込んできても、無駄だぜ?」
俺が魔法を使うとは思っても居ないのだろう。アーサーは突っ込む俺を正面から迎え撃とうとしている。
やるならこのタイミングしかない。
異世界転生ものや、その他バトル系アニメでよく活用される虚を着く攻撃。
実際に通用するのかは知らんが、これしかない。
俺は突っ込みながら、左手を前に出した。
「うおおお!!!ウォーターボール!」
俺は小さな水の塊を目の前に出した。
アーサーは見事に虚をつかれたらしく、俺が出した水の塊を木刀で叩き割った。
それと同時に俺は左足でアーサーの右スネを蹴る。
アーサーは何とか踏ん張るが、隙ありだ。
俺は思いっきり木刀を振り抜いた。
決まった。と思った俺が馬鹿でした。そんな都合よく行くはずもなく、俺の渾身の一振はあっさりと受け止められてしまった。
「魔法で虚を着くところまではよかったんだがな。焦りすぎだ。」
ぐぅのねも出ないとはまさにこの事だろう。
アーサーの言う通り、俺は焦ってしまった。
さて、これからどうしたものか。アーサーに同じ手は通用しない。
俺はどうにか一旦距離をとることに成功した。
今のところ、攻めているのは俺だが、アーサーがいつ仕掛けてくるかもわからない。
ならば、と策を練る。
俺はひたすら水の塊を出し続けた。
「ウォーターボール!ウォーターボール!!ウォーターボール!!!ウォーターボール!!!!ウォーターボールゥゥウウ!!!!!」
日頃の成果であろう、思っていたより魔力が切れなかった。
だが、闇雲に放ったウォーターボールはアーサーを捉えることはなく、辺りに着弾するばかりである。
「やけになったか、ペーパー!もうそろそろ決めさせてもらうぞ!」
アーサーはそう告げると、構え直し、技を出す準備に取り掛かる。
それでも尚、俺は水の塊を出し続ける。
途中何度かアーサーを捉えたが、当たっても意に介さず、技を出そうとしている。
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ペーパーはかなり成長した。その中で様々な機転が利き、僅かながら追い込まれてしまった。
だが、まだ負けるわけにはいかない。個人的な理由だが、それを伝えるとペーパーはどこかで優しさが出てしまう。
だからこそ、実力で阻止するのだ。
俺は不器用だから、魔法は生活する為に必要最低限のものしか扱えない。
魔法の分野でペーパーに教えてやれることはほとんど無いに等しい。それでもペーパーは密かに鍛錬し、俺を追い込んだ。
ならば俺も持てる力の全てを駆使して、応える。ペーパーのウォーターボールの精度が上がっているが、気にする事はない。
所詮はただの水の塊。威力もそれほど強くはない。
「行くぞ、ペーパー!これが俺の渾身の一撃だ。セイクリッド…」
そこで異変に気付いた。石だ。水に混ざって石が飛んできたのだ。
本来ならば気にするはずもなかった。しかし、いきなり飛んできた石に本能的に反応してしまった。
しまった。そう思った時には既に遅かった。
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俺は闇雲にウォーターボールを放った。フリをしたのだ。これまで見てきたからこそ、アーサーなら必ず避けると信じて。
俺がウォーターボールに混ぜて投げた石にアーサーは反応した。
アーサーがしまったと思った瞬間には、俺は木刀をアーサーの首元に当てた。
多分、今後100回すれば100回負けるだろう。今回限りの作戦で俺は辛勝した。
辛勝と言っていいのかもわからないけども、そういうことにしておこう。
にしても、強すぎだよ、本当に。