第6話 決意と覚悟
さあ、そろそろ出すぞ!
あれから俺は麻婆豆腐を作り終え、家の扉の前で消えた振りをしたお母さんが帰ってきてめちゃくちゃ弄られた。どうやら油自体は元々あったらしく、家の中で俺とウリエルの2人だけにして外から見守っていたそうだ。やってる事が気遣い上手の母親だけあって責めたくても責められないのがとても悔しいが、後ろ姿で語るのがとてもカッコ良くて俺じゃどうしてもお母さんには太刀打ち出来ない。その後お父さんも帰ってきて、いつもより賑やかな夕ご飯になった。因みにウリエルの事は全て両親に話した訳ではないが、訳ありという事で少しの間一緒に暮らす事をお母さんとお父さんは承諾してくれた。当の本人は「全く、この世界の人は世話好きなんですね」と言って苦笑いしながらもう少しこの家に居座る事にしたらしい。
7月20日 月曜日
「皆、今日からこの学校に転校生が来た、入って来なさい」
クラスの皆が興味心身なのかザワザワと話し合った。勿論俺の話し相手は1人もいないが、言ってて悲しくならないのかって?友達はこれから作れば良いんだよ。まあ、いつになるかは分からないが…
「紹介しよう、海外から帰ってきた帰国子女の中山瓜江ちゃんだ。これから半年と少ししかないが宜しくしてやってくれ」
担任の教師が紹介した瞬間、クラスの皆はほぼ全員が「キャー!カワイイ!しかも金髪という事はやはり百合属性!?」とか、「俺のタイプだ、休み時間告ってみようかな!」とか「やめとけ、お前が告った所で振られるだけだよ。」とか、ドラマや漫画で良くあるシチュエーションが目の前で起こった。あれ絶対ウリエルだよな、誰だよ中山瓜江って俺そんな名前の人知らない。
「静かに、席は後ろ側にある席を用意してあるから使ってくれ。」
「分かりました、それでは皆さん。今後とも宜しくお願いします。」
ウリエルの挨拶によってクラスの男子が「俺達に春が来た〜〜〜!」と叫び、女子の一部はウリエルに嫉妬している人がいた。俺は昨日何をしでかした事を思い出し、穴があったら入りたいと思う程羞恥心に自分のしでかしたか事を激しく呪った。その後は、ウリエルも空気を読んだのか俺に話しかける事もなく1日が過ぎようとしていた。
帰りのホームルーム
「それでは皆、部活生は部活動に励み帰宅生はそのまま寄り道せずに帰りなさい。それでは解散!」
その後、俺はいつも通り影を薄くしていつも通り下校していた。その時、ウリエルは俺の前に立ちなんだか不機嫌な様子で頬を膨らませていた。
「どうして学校では声かけてくれなかったんですか!」
「嫌、ウリエルは気を遣って俺から距離を置いたんじゃなかったのか?」
「どうして私が淳君の距離を置く事で気を遣う事に結びつかんですか!」
どうしてって言われてもなあ。
「苦笑いで済まさないで下さい。……ブツブツ(私だって少しは人間の貴方に期待してたんですよ。)」
「ん、なんか言ったか?」
「何も言ってません!(怒)」
(何をもって怒ってるのかは知らんが、このまま高校に登校しながら学校生活を送るのは天使に見つかって危険だと思うんだが。)
「それに関しては大丈夫ですよ。」とウリエルがいきなり答えて来た。
「あの、俺なんも言ってないんだが。」
「嗚呼、言ってませんでしたね。エンジェルリングを人間に持たせた天使はエンジェルリングを持っている人間の心の声が聞こえるんです」
「もうなんでもアリなんだな。でも待てよ、それってまさか!?」
「はい、朝の淳君の声を聞いた瞬間少し笑いそうになりました。なんとか堪えた私を褒めて下さいよ?」
「嗚呼!また俺のブラックヒストリーに新たな1ページが記載されてしまった〜〜!」
ウリエルは可愛らしく首を傾げるが、要するに俺の思考全部読まれる訳だろ、ふざけんな昨日の俺の同情した気持ちを返せ!純情な俺の心の声を聞くんじゃねえ!
「それはそうと、今度ガブリエルに会っても大丈夫な理由を説明すると、」
俺の心の嘆きがあっという間にスルーされてしまった。なんだろう、この敗北感は、
「ちょっと、聞いてます?」
「聞いてる聞いてる」
「今度淳君の心の声を校内放送で発表しましょうかね」
「ちゃんと話聞くんでそれだけはやめて!?」
「な、しませんよ。それより、淳君に渡したそのエンジェルリングはこの町を丸く円で囲むような形で私の頭の中に魔力の流れが入って来てるんですが、今ここら辺に天使級の魔力を持ち合わせてるのは淳君くらいしかいません。もしもの事があれば瞬間移動
があるので心配無用ですよ。それに、淳君の近くにいないといつ襲撃されるか分かりませんので同じ高校へ行く事になりました。一応、食費代は淳君のお母様から頂いているので気にする必要はありませんよ」
(成る程、つまりこのような結果を招いた犯人はお母さんだったか。はあ、これから大変だな。)
よくある事だけど新キャラが出るたびに旧キャラの存在が薄くなってくる。