第3話 炎と水
続けて出します。
どうすんだこの状況!あの厨二病後の事考えずに俺を崖から突き落としたんじゃねえだろうな。
「淳くーん!大丈夫、右手に付けてる指輪を信じて!」
(指輪?指輪なんて信じられって言われても……!?)
その瞬間、俺の右手の人差し指に通された指輪の赤い宝石の部分が紅く輝いて突然俺の背中から白く大きな羽が四つ制服の上から生えた。
「淳君、その羽は自分が頭の中で想像したように操る事が出来ます。試しに頭の中で自分が飛ぶイメージを想像してみて下さい!」
(たく、無茶言いやがって!コレで死んだら本当に呪ってやる。飛ぶイメージだよな、適当にツバメの飛ぶ姿で良いのか?)
俺はツバメの飛ぶイメージをその瞬間頭の中で想像した。しかし、
「おい、全然想像しても飛べないんだけど!」
「後は自分でなんとかして下さい!」
「はあ!?」
厨二病は背中向けてどっか走って行った。アイツ俺の事見捨てやがったなこの野郎!俺は神に縋る気持ちで願った。
(ああもうダメだ!神様、俺あの自称天使に一撃与えるまで死にたくありません!どうか俺に力を!)
その時、俺の体は空中で落下速度が下がるのを感じた。
(あれ?体が地面に付いていない。)
俺の体は地面にダイビングするのではなくむしろ反対に地面から遠ざかっていた。俺は周りを見渡すと、自分の体がさっき落ちていた位置よりも高い位置にいるのを確認した。
(な、何が起きたんだ?まさか、………翼が勝手に俺を運んだのか!?)
自分の白い羽が勝手に空中を羽ばたきながらゆっくりと地面に着地した。足を付いた瞬間、疲れが溜まり背中の白い羽も白い結晶となって消滅した。指輪の紅い光もいつのまにか収まっていた。
「はあ、疲れた。それにしても、今日は変な日だったな。あ、学生カバン置いてきた。でも今戻るとあのヘンテコ自称天使軍団に何されるか分かったもんじゃない。でも、外はもう真っ暗だ。仕方ない、一度家に帰ってから考えよう。」
一方その頃、
〈淳の通う高校の裏山では〉
「はあ、はあ。なんとかあの少年を逃す事が出来ましたね。」
「この私と1対1を選ぶなんて何を企んでいるのかは知らないけど今の私にとっても好都合なんだ。ウリエルの魔力はあの少年に渡したエンジェルリングに殆ど消費したのにあの人間には出来もしないことを言ったんだ?」
「出来もしないこと?違いますよガブリエル。私はあの少年と約束をしただけです。」
「その約束が本当に守れると思っているのですか?」
私はクスっと口の中から笑いが漏れる。
「何か私可笑しい事言ったか?」
「ええ、言いましたよガブリエルさん。約束って言うのは互いを信じ合って守りきる事を言うんです。ハナから守れない約束なんてただの嘘でしかありません。私は、嘘つきではない事を今からガブリエルさんに証明しますよ!」
私は両手の手の平から小さな炎を生み出した。
「私とウリエルの実力は天界でも互角と言われていたけど今の貴方は私にとってみればこの世界の人間と余り変わらねえよ。それに古来より炎と水は圧倒的に水の方が優っていると言われている。いくら炎を司るウリエルでも降参して天界に戻って貰う事をオススメするけど、それでもやるか?」
「当たり前でしょう。目の前にいる相手がどれだけ強かろうとどれだけ相性が悪かろうと私は貴方から逃げ切った後で淳君と会う事が今の私の"勝ち"なんです。すいませんが、まだ私は捕まるつもりはありませんよ!」
かつて天界で天使として名を轟かせた2人の翼を持つ者同士がこの瞬間ぶつかり合った。
これからどんどんエスカレートするかも?