第2話 契約の指輪
今回は少し多めです。
「は?」
この瞬間俺の中の時間が止まった。
「信じられないかもしれませんが、本当に天使なんです!」
何言ってるんだこの人、厨二病拗らせすぎて頭おかしくなってんじゃないのか?
「貴方が本者の天使なら本物の天使は自分が天使である事を隠すんじゃないんですか?」
「うぐ!」
「自分から天使って連呼されてもただの馬鹿にしか見えませんよ。いい加減諦めて厨二病を拗らせていますと宣言した方が気が楽になりますよ。大丈夫です、僕は何も見ていないし何も聞いていない。だから大人しく"私は厨二病を患っています"と宣言してください。」
「ち、ちゅうにびょう?それはどんな病なのですか?」
俺は一瞬考えることを放棄した。
「あの、天界の自称天使さんはどのような生活をしていたのですか?」
「自称じゃなくて本物の天使です!…実は、今の物質界はガブリエルが担当していて最近の言葉や流行があまり分からないんですよね。それに天界の天使は残業を毎日上司に押し付けられる毎日が日常で、あまり外の世界に詳しくないんです。」
何この人、上司から残業を押し付けられるなんてこの人の働いている会社ってもしかするとブラック企業なのか?今時36協定を無視するような会社なかなか見ないぞ。
「そんな哀れみの目で私を見ないで下さい!」
「自分でも悲しくなるくらいなら言うなよ。」
そんな会話をしていると、俺に向かって天使?が俺の腰に手を回して後ろに重心を置いてきた。俺は体を支えきれずに尻もちをついた。その瞬間、さっき俺の立っていた位置が急に爆発した。
「イッタ!?」
「すいません、大丈夫ですか?」
「嗚呼、だけどもうちょっと優しく教えてもらいたかったですよ。一体何が起こったんですか?」
目の前の自称天使は空を見上げていた。嫌、適切に説明すると空に飛んでいる女性?を見ていた。
「やはり貴方だったか、大天使ガブリエル。」
空を飛んでいる女性は黒髪黒目で夏の夜に似合いそうな浴衣を着ていた。背中には四つの羽を羽ばたかせて両手には弓矢を持ち、此方へ射ようとしながら答えた。
「いい加減観念して捕まりやがれ!もうお前の鬼ごっこはここまでなんだよ。元々この件に関してはお前の自業自得だよウリエル。いくら仲の良い同期のルシフェルを探す為とは言え、この世界に降り立つという事がどんな意味を指しているのか理解してるよな?」
「勿論ですよ。それでも、私は唯一の友達を見捨てる程自分に白状でいたくないんです。悪いですけど、此処は逃げさせてもらいます。君、名前は?」
「え!?」
「いいから早く答えて下さい。」
「この世界の一般市民、しかも子供を巻き込もうとするなんて…見損なったよ堕天使ウリエル!」
その時、俺の肩をガッシリと強く掴まれた。
「この状況で君を捕まるのはこちらにとって最悪の事態になんです。多少強引かもしれませんが、お名前をお聞きして宜しいですか?因みに、私の名前はウリエルです。ほら、君は!」
「な、中山淳と言います。」と俺はウリエルの気迫に押されて流されるように答えると、ウリエルは優しい目で俺を見ながら鋼で出来た指輪を手に取り俺の右手を優しく握った。
「それじゃあ、中山淳さん。貴方はこれからどんな難題もの壁が待ち受けていると思います。そんな中で、コレは貴方の側で見守る役目をしてくれる御守りのような物ですが、私がもう一度貴方に会うまで無くさないで大切にこの右手の人差し指から外さないで下さい。」
慌てるように浴衣を着ている女性は叫んだ。
「聞くな少年!ウリエル、君は分かってるのか?その行動は天界そのものの問題をその少年に丸投げしてるんだぞ!」
「私が見つけた救世主は貴方が思っているよりも弱くはありません。淳君、御武運を。」
「え?」
俺は今の状況が理解出来るまでに数秒かかった。何故なら、崖から突き落とされたからだ。誰かと言うと、指輪をくれた天使は崖から俺を突き落とした。
「え?あああああァァァァァァァァァァ!?」
このくらいかな。