死んだラプンツェル
注意、とにかく語り手がウザいです。
ごり押しのハゲネタです。
思考回路が小学生です。
それでも良ければ
「ラプンツェル。髪の毛を下ろして頂戴」
塔の下から響く伸びやかな声。ラプンツェルの母親(偽)の声です。
声を聞いたラプンツェルは「帰って来た!」と喜んで髪の毛を下ろします。
「(偽)ってやめなさいよ」
じゃあ、魔女って言いますね。
魔女はラプンツェルの髪を掴み……
「魔女は更に駄目だから!やめなさい!」
面倒な方ですね。じゃあおばさんって言います。
これで解決ですね、見た目を伝えるならこれが一番。
「はぁ!?流石にそれは無いでしょ!やめなさいよ!」
「お母様〜早く髪を掴んで頂戴〜」
ほれ、おばさん。早く行きたまえよ(笑)
「あんた覚えてなさいよーー!?」
おばさんはラプンツェルの髪を掴み、合図を出します。
ラプンツェルはそれを見て、滑車にかけた髪を勢いよく引っ張ります。
その時、その時です。いきなり動き始めた髪、ちょっとばかし仕事で腰を痛めていたおばさん、さぁ結末は見えました。
ギクッ。
「ぎゃぁぁあああ」
そう、ギックリ腰。あまりの痛みに悶絶するおばさん。
おっと、バランスを崩してしまいました。
慌ててラプンツェルが髪で支えます。するとここで第二の悲劇が起こりました。
ブチッ。
「うぎゃぁぁぁぁ」
ラプンツェルの黄金の髪はするりと頭皮を滑り、なめらかに宙へと投げ出された。その髪が描く放物線は、栄光の架橋だーー!
髪ごと地面に投げ出されたギックリ腰おばさんは地面にて悶絶。
いきなり頭がスッキリしたラプンツェルも塔にて悶絶。
一気に地獄絵図となりました。
「なんで……こんな事に……」
腰をさすりながら隠し通路の扉を開けて、長い階段を登って来たおばさんは月のように煌めくラプンツェルの頭皮を見て絶望します。
ラプンツェルも自分の頭とおばさん、いやお婆ちゃんの急な老け具合を見て絶望します。
娘が急に禿げて、腰痛めたからって、急に白髪になって、肌もシワだらけになるかしら……あぁそれだけショックなのね。と。
涙目でお婆ちゃんを慰めるラプンツェル。
お婆ちゃんも私のせいだ……と泣いています。
まぁ、いや、ギックリ腰にならなくても髪は抜けてたんですけどね。
「なんですってーー!?」
「お母様どうしたの?」
長い髪、日常生活でも毛根に負担はかかります。
おまけによく洗えてませんし、人を頻繁に運搬してたらそりゃダメージ凄いですし、どっちにしろ将来的には抜けてました。
「……うっそん」
「お母様が独り言を呟いてるわ!心のダメージが!」
色を失った髪の毛を掃除し、腰に薬を塗り、夕飯を作り食べる頃には、二人とも落ち着きを取り戻していました。
ラプンツェルはお坊さんみたいでこれは斬新ね!と笑顔です。流石、攫われの子。適応力が違います。
力を失ったラプンツェル。魔女からすればもう利用価値は無いですが、禿げたプリンセスを返しても国が受け取ってくれるか……。
もう塔に篭る必要性も失ってしまい自暴自棄になったお婆ちゃんは前からラプンツェルが言っていた事を思い出します。
「塔から見える光が見たいの!」
そうだ、街に行こう。
ランタンが上げられるのは明日の夜です。
朝から森を抜ければ余裕のよっちゃん。愛着も湧いて我が子同然のラプンツェルの願いを叶えようという親心です。
「ねぇ光、見に行く?」
「えっ!?いいのお母様?ありがとうーー!」
飛び跳ねるラプンツェルを見てお婆ちゃんは笑います。
あぁ美なんて要らなかったのだ……完。
「ちょっと勝手に終わらせないでよ」
いや素晴らしい家族愛ですね。で終わりで良いじゃないですか。
「いやせめてランタンの場面まで頑張りなさいよ!」
では、行きますよ。
ラプンツェルは母親から信じられない一言を告げられた。
「光、見に行く?」
今まで断固して外に出る事を許さなかった厳格な母が提案してくれたのだ。
ラプンツェルはその夜、眠れなかった。
明日を思い浮かべるだけで心が躍るようだった。
次の日の朝、ラプンツェルは初めて塔を降りた。
髪は無くなってしまったから階段で降りたし、頭はストールで隠しているけど、これからを思い浮かべれば、そんなの些細な事だ。
初めて踏む芝生の感触、空気の動き、川の流れに、蝶の踊り、木のせせらぎに人々の声……他の者にとっての日常は彼女にとっては特別な物となった。
そしてついに夜。
ラプンツェルと母親は隣同士で座り、夜空を眺めていた。
すると……
「ちょっと待て、テンポが速い。丁寧にやれ」
我儘ですね……。仕方ない。
ラプンツェルと母親は隣同士で座り、夜空を眺めていた。
まだ夜空はいつも通り、暗い色に染まったままだ。
「ねぇ、いつ光は見えるのかしら?」
「もう少しよ、ちょっと待ちなさい」
ラプンツェルは待ちきれないと言わんばかりに母親に問いかける。
母親はふふっと笑いラプンツェルの頭を撫でた。
すると、その時だ。
夜空に無数の光が上がった。星より暖かく、美しい光。
ラプンツェルはその光景をただ見つめていた。
その瞳には涙と光が浮かんでいた。
(ううっ……眩しい、眩しいわ!ラプンツェルの笑顔!)
ううっ……眩しい、眩しいわ!ラプンツェルの頭!
「おい、ふざけんな」
ちょっとした冗談ですよ。ジョークですジョーク。
まぁなんだかんだめでたしめでたし。家族愛っていいですね。
「おい、無理矢理終わらせるな!あっちょっ待てーー!」
全国、全世界のラプンツェル好き、ハゲネタ嫌い、そして毛根に謝罪をします。