可燃石の粉とラッキー成長?
俺たちはグリズの馬車に乗りながらコロン村へと向かっていた。
出発して3日目頃から雪がちらほらと降りだし、今日の4日目には道路に雪が積もり始めていた。まだ何とか馬車は進めている。
「あとどれくらいなんだ?」
「ここでまだ半分だな」
「結構時間がかかりそうだな」
「あぁ本当にすまないと思ってる」
「パパーグリズさんの好きな人のためですからね!」
馬車の中にはグリズとその従者マーキス、俺とシャノン、俺の膝の上にパトラがいる。
他のみんなはそれぞれ箱庭の中で自由に過ごしていた。
シャノンとパトラは寒さ対策としてモコモコの可愛い服を着ていた。
これが見れただけでも、手伝いにきたかいがある……なんてことはさすがに言えないが。
窓の外では段々と雪の量が増えていっている。
森の中では俺たちの乗った馬車を先頭にグリズの商品を乗せた馬車が続く。
「ロック様、大変申し訳けありません。また現れたようです」
「わかったよ」
「はぁ、今日これで2回目ですね」
「悪いな。頼んだ」
グリズを乗せた馬車は最初、グリズを守るために一番最後を走っていたのだが、あまりに街道に盗賊や魔物が多くでるため俺たちが先頭に乗ることになった。
グリズの部下たちに任せた方がいいのかもしれないが、それではあまりに時間がかかるのだ。
あまり、この辺りまでくると兵士の見回りも追い付いていないのか、魔物の間引きがおこなわれていなかった。
俺たちが外で出てくるとほぼ同時にラッキーが箱庭からでてくる。
『運動不足解消に私が行ってこよう』
「いいのか?」
『せっかくの雪だからな』
「わかった。いつも通り倒した魔物は箱庭の中に入れておいてくれ」
『あいよ』
ラッキーはそのまま走り出すと道の真ん中にいるメロンベアーへと襲いかかった。
メロンベアーは緑色の身体に網目状の模様が入っている変わった魔物だ。
身体を大きく見せる効果があるなんて話があるが、それよりも非常に美味しい。
特にこの寒い地域にいるメロンベアーは脂ののりが良くて高値で取引される魔物だ。
最近はラッキーも手加減ができるように……なってなかったらしい。
俺たちの目の前で、メロンベアーがはじけ飛んだ。
雪の上で足を滑らせたせいで勢いがつきすぎたのだろう。
ラッキーも近くの木にぶつかり大きな木が道へと倒れこんできた。
幸いにも馬車は無傷だったからよかったものの。
『悪い、わざとじゃないんだ。予想外に足元が滑りやすくてな』
「はぁ、大丈夫だよ。この遭遇率だとまた魔物はでてくるだろうから、それよりもラッキーは怪我はないかい?」
『もちろんだ! 見ての通りピンピンしている』
ラッキーは雪が楽しいのか、その場で何度かジャンプを繰り返して雪の中にダイブしていた。
尻尾が激しく左右に触れて、雪がバサバサと空中に舞っている。
「それならよかったよ。この木……箱庭の中に入れて何かに使ってもらうか」
俺は木に触れて箱庭の中へとしまってしまう。
こういう時に箱庭は非常に便利だ。
撤去をするにしても限界はあるが一瞬で片付いてしまう。
メロンベアーは……ダメだな。毛皮も肉も使えそうもない。
『ロック、ちょっと遊びに行ってきてもいいか?』
「いいぞ。気をつけてな」
『あいよ』
ラッキーはそのまま雪原の中を走りだした。
あっという間に見えなくなる。
馬車に戻ると、馬車が雪にはまり進めなくなってしまっていた。
「ドモルテ、悪いが外にでてきてくれるか」
「はーい。呼んだ?」
「悪いんだけど、雪が多いみたいで少し溶かしてもらっていいか?」
「いいわよ」
大賢者のドモルテに雪を溶かすだけの簡単なお仕事をお願いするのは贅沢な使い方のような気もするが、他の一般的な魔法使いにお願いしているといつになるかわからない。
「それじゃ離れていてね」
ドモルテが両手を前にして無詠唱で雪の道にファイヤーボールを打ち込んでいく。
いつも見ている魔法よりも小さいように感じるが、それでも普通の魔法使いが放つものよりはだいぶ大きい。
そしてなによりも持続時間が全然違った。
ドモルテの放ったファイヤーボールは道の雪をあっという間に溶かしていった。
「ドモルテ助かった」
「いいわよ。これぐらいたいしたことじゃないし」
その溶けた雪の上に、、今度はグリズの部下たちが何かを一斉にまき出した。
「グリズあれは何をしているんだ?」
「あれは雪が積もらないように使い終わった可燃石の粉をまいているんだ」
「可燃石の粉?」
「あぁ可燃石を砕いた粉には雪を溶かす効果があるってわかってな。あれをまいておくと数週間は雪が積もらないんだ。だから、俺たちが帰る時には雪かきが必要なくなるってわけだ」
「なるほどな。そんな便利な使い方があるんだな」
可燃石は燃える石と言われていて、魔力を込めると爆発的な火力を生み出すことができる石だ。
日常的に使われることが多いが、雪があまり降らなかった俺の村ではなじみがなかった。
グリズの部下たちは手早くざっと粉を道路にまいていくとぬかるんでいた道も少しずつ乾いていった。それほど量をまいているわけでもないのに、かなり効果があるようだ。
泥にはまってしまった馬車もあっという間に抜け出すことができ、俺たちは順調にコロン村へと向かっていった。




