ゴブリンの始末。えっ? 訓練にならないから任せちゃうのが一番でしょ。
ダンジョンの方から大きな爆発音が聞こえてくる。
「ロックさんあれって……」
「あぁ、アイザックたちだろう」
「あの爆発音ってかなり大きくないですか?」
「またアイザックが無茶をしたんだろ」
アイザックには捨て身の技があった。
だが、3人が協力をすれば新緑のダンジョン内でそんな大技を使う必要なんてないはずだ。
「ラッキー、ダンジョンまで乗せて行ってくれ!」
『あいよ』
「私も行きます」
ラッキーの上に飛び乗るとシャノンも俺の後ろに乗ってくる。
「パトラとガーゴイルくんは村で待機しといてくれ。パトラとガーゴイルくん2人とも気をつけてな」
「パパーわかったよー」
「パトラちゃんは僕が守ります」
「あぁ怪我に気をつけて頼む」
ガーゴイルくんとパトラのどちらが強いかわからないが、パトラはいろいろ応用が効きそうな気がする。
俺たちはラッキーに乗りダンジョンを目指す。
ダンジョンには前日に俺たちが回収したせいもあり、魔物はほとんどいなかった。
そうなると爆発音は、一番奥のワイバーンのいるところだろう。
ワイバーンの群れがいる場所へ続く道にはゴブリンの死体が何体も転がっている。
アイザックたちが仕留めていってくれたのだろう。
段々と奥に行くにつれ血と肉の焦げる匂いがしてくる。
「シャノン大丈夫か?」
「大丈夫です。ただすごい臭いですね」
「あぁ」
奥へ進んでいくと、カラとエミーに支えられ歩いているアイザックがやってきた。
「おい大丈夫か?」
「なんだロック、今さら来たのか。もう終わりだぞ。俺の全力でワイバーンは全部倒してやった。俺だってやればできるんだ。もうワイバーンはいない。お前らも依頼失敗だ」
「アイザック喋らないで。助けてやらないわよ」
アイザックの怪我はカラが回復したのか出血しているところなどはみられないが、3人ともすすだらけになってひどく汚れていた。
「ワイバーンを全部狩ったのか?」
「あぁ全部木っ端みじんにしてやった」
自分たちが依頼達成に失敗しそうだから、俺たちまで巻き込んだということなのだろう。まさかこんなことまでしてくるとは思わなかった。
「ロックさん、それなら王都に戻って依頼品を買って報告しましょう。負けないことが一番です。別に割高になってもいいじゃないですか。私、街の外れで売っているの見ましたよ」
シャノンはわざわざ俺にそう言ってくる。
「いや、アイザックが爆破したと言ってもまだワイバーンが残っている可能性もある。だから先にワイバーンを見に行ってからにしよう」
「でも……」
シャノンは不安そうに俺の方を見つめてくる。
「せいぜい探すんだな。俺らは先に王都へ戻らせてもらう。これでお別れだ」
俺たちはアイザックと別れてワイバーンがいた崖を目指した。
途中にはゴブリンナイトの死体が転がっていた。
切り口からみてアイザック一人では倒せなかったようだ。
でも、他に強い魔物などは見当たらなかったので、このゴブリンナイトがこの群れのトップだったのだろう。
これで、チヨウシノ村からの依頼はほぼ無事に終わった。
もうゴブリンに困らされることもない。
俺たちが登っていくと、本当にワイバーンは1匹もいなくなっていた。
依頼品はワイバーンの鱗、爪、牙だったはずだが、そこにはワイバーンの死体すらなかった。
「本当に何も残っていないですね」
「あぁ……いや、瓦礫の間に何かいるな」
「えっどこですか?」
瓦礫の中に魔物の気配がする。でもワイバーンほど大きくはないようだ。
「ワイバーンではないけど、瓦礫の間にいたから助かったのかもな」
瓦礫の中を見て見るとそこには卵のようなものが転がっている。
「ワイバーンの卵ですかね? この子は運が良かったんですね」
「あぁ、でもこの子だけじゃなくて何個か転がっているみたいだぞ」
アイザックの魔法でワイバーンたちはダメになってしまったが卵は無事だったようだ。
卵にも使い道があるか? 今回の依頼内容には含まれていない。
とりあえず箱庭の中にでもしまっておくか。
ワイバーンの卵は全部で10個あった。
そうだな。あとでガーゴイルくんにお願いして卵料理にしてもいいかもしれない。
「やっぱり、ここにはもう他に何もないな」
「そうですね。それでどうしますか? ここのダンジョンでもほぼ回収は終わりましたし」
そうだな。
今日が3日目。
まだ残り4日間ある。
アイザックは俺の大方予想通り、わざわざ遠回りをしてやって来てゴブリンの始末もやってくれた。
ゴブリンくらいは俺たちで処理をしてもよかったが、ゴブリンではシャノンの訓練にもならないので適材適所ということだ。
さて、後は王都で販売組がしっかり利益をだしてくれるのを待ち、シャノンの訓練とチヨウシノ村の収益を上げる方法を考えるか。
王都でキャベッツを売るのに料理の仕方も教えておいた方がいいな。
とりあえず一段落だ。
あとはアイザックたちが王都まで戻り7日目に報告をするのを待とう。
ちょっとゆっくりするか。
俺たちは村に戻って少し休憩することにした。
ガーゴイル「パトラちゃんは僕が守るからね」
パトラ「ありがとうございます。それじゃあ早速あれをやってもらって、それが終わったらこれをやってくださいね」
ガーゴイル「……」(僕が100年学んだより指揮者としての才能がすごい)




