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彼女は俺を死なせないために諦めろと言った。でも泣いている彼女をそのままにはできなかった。

「ヒョロヒョロだからといって弱いとは限らないだろ?」

 

 彼女は涙を拭き俺を真っすぐと見つめる。


「えぇそうね。でも理由なんて何でもいいのよ。あなたは私より弱いっていう事実があるだけ。ねぇあなたからもリッカさんにやめるように言ってくれない? 私は奴隷になった時点で人生を諦めているから仕方がないけどあなたまで巻き込まれる必要はないわ」


「じゃあシャノンより強ければ問題ないんだろ? それにあなたのような美しい人が涙を流しているのにそれを放っておくことはできないよ」


「うっうるさいわね! 泣いてなんかないんだから! あなたになんかわからないわよ。わっ……私は……あぁもう! いいわすぐに実力の違いを思い知らせてあげる」


 目の前で泣いている女性がいたらどうするのか?

 そんなのは誰に聞かなくても答えは一つだ。


 自分にできることがあるなら助けてあげる。

 それ以外の選択肢なんてあるわけがない。


「リッカさんけちょんけちょんにしてしまいますがいいですね?」

「えぇもちろんです。多少の怪我は目を瞑ります。ルールは無制限でいいですよ。簡単にはシャノンさんも諦めませんから。もちろん死ぬような怪我はダメですが何をしてもいいので相手に負けを認めさせてください」


 お互いが訓練場用の木剣を手に取る。

 シャノンの構えは隙がなく、それでいて絵画を見ているような気品があった。

 今までかなり努力をしてきたのだろう。


「やめるつもりはないのね? 私はあなたよりも強いわよ」

「もちろんです。俺もあなたより強いので」


 空気が段々と張りつめていく。シャノンは先ほどまでの泣き顔だったとは思えないほど真剣な顔をしていた。


「行くわよ」


 そう言ったシャノンは踏み込み一瞬で俺の横へ移動していた。

 なるほど。なかなか良い動きをする。ただ踏み込みが一歩たりない。まるで勝つことに躊躇している? いや無意識下で人への攻撃に躊躇しているようだ。


 なるほど。強いのは強いが自分の力を上手く扱えていないのだ。

 だからやりすぎることへの恐怖が剣を鈍らせている。


 もっと全力を出せることを教えるところからだな。


 打ち合いの中シャノンと目が合う。そこには光のない暗い闇が広がっていた。

 

 そうか。ずっといわれのない理由で避けられそして亡くなった人たちの死を自分の責任だと思い続けてきたのだろう。


 シャノンの剣はとても綺麗で素直だった。


 きっと何千回、何万回と素振りをしてきたのがわかる。その動きは正確で早く、そして的確に急所を狙ってくる。


 でも、それだけだった。


「ほら、ここに攻撃をするとそうだね。こっちに動くよね。そうなるとほら足元が危ないよ」


 わざと寸止めとフェイントを交えながら弱点を教えていく。

 綺麗すぎる剣は読まれやすくもあるのだ。


「これで終わりだよ。シャノン」


 俺は思いっきりシャノンの持っている剣を弾き飛ばし首元に剣を突きつけた。


「これで実力差はわかっただろ?」


「いいえ、まだ私は負けてないわ。私が負けを認めるってことはあなたが死ぬってことなの。だから私は負けられないの」


 シャノンが叫び今度は肉弾戦を仕掛けてくる。

 そういうことならとことん付き合ってやるしかない。

 俺も剣を捨てシャノンに付き合う。


 彼女の汗が飛び散り必死になって俺へ1発当てようと躍起になっているが彼女が焦れば焦るほど俺の方は冷静になっていく。


「シャノン、ほら脇腹が空いてるよ。それじゃあ肋骨を折られてしまうよ」


「いちいちうるさい。私は負けないし。負けるわけにはいかないの」


 シャノンは剣術だけではなく体術もしっかりと基礎を身につけていた。

 ただ先ほどの躊躇といい明らかに実践が足りていない。


 目の中の暗さとは裏腹にまっすぐな動き。


「少し痛いぞ」


 シャノンが殴りかかってきた腕をそのまま引っ張り勢いに任せて投げ飛ばす。


「もういいだろ? 今ので本当なら折ることだってできたんだ」

「だから……ダメなんだって。あなただって死ぬのは怖いでしょ。本当に諦めてよ」


 彼女が半泣きをしながら訴えてくる。俺悪役みたいになってるんだけど。


「リッカさんまだやるの?」


「はい。彼女が納得するまで付き合ってもらえればと思います」


「わかった。シャノン後悔するなよ。俺の全力を見せてやる」


「ふん。後悔なんてしないわよ。絶対に負けなんて認めてあげないんだから。あなたの方こそ諦めなさいよ。そうすればあなたは死ななくてすむんだから」


「まるで死ぬ運命が決まっているような言い方だな?」


「私の周りは良い人からどんどん死んでいってしまうの!」

 彼女は立ち上がり俺に闘志を向けてくる。

 シャノンの信念がそう簡単に折れないということを訴えてきた。


 それにしても、俺を殺さないためにパーティーを組むのを嫌がるなんておかしな話だ。

 だったら答えは簡単だった。俺が死なない理由を教えてやればいい。


「俺が死なない理由を見せてやる。だけど頼むから俺より先に死ぬなよ」


「笑わせないで! 私は生命と樹木に愛されたエルフよ! 私を諦めさせたいなら魔王でも連れてきなさい」

 

 魔王か……そんなのは無理だが。

 でもそれに近いものはいるぜ。


 俺は思いっきり叫んだ。


「ラッキー!」


 腕輪から召喚されると同時にラッキーの魔力を放出させる。

『ワオーーーーーン』


 ラッキーの鳴き声はシャノンを恐怖のどん底へ落としそのまま後ろへ倒れるように尻餅をつかせた。

 

 地面が割れ空を飛んでいた鳥の魔物が落下してくる。

「フェ……フェンリルなんて……そんなありえない……」


 シャノンの顔は完全に恐怖で引きつり、泣くことさえ忘れているように奥歯をガタガタと振るわせている。シャノンの座っている地面は徐々に色が変わっていった。


「ラッキー……」


『バフゥ?』


「犬のフリをするな」

 

 ラッキーの魔力の爆発は一瞬だけだったが大地を大きく揺らした。

 リッカさんの方を見るとなぜか俺がものすごく睨まれていた。なんでもいいって言われたけどやっぱりフェンリルはダメ?

ラッキー「バフッ」

ロック「加減って知ってる?」

ラッキーはウルウルとした瞳でこっちを見ている。


下の★は加減せずに5つでも大丈夫です。

応援ありがとうございます。

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ラッキー「どこの本屋にも置いてあってよかったな」 ロック「ラッキー実はそれは……」 ラッキー「うっ売れ残りってことなのか?」 ロック「今は自粛中だ! きっとコロナが終われば……いやネットで今すぐ注文しよう!」 ご自宅での暇つぶしにぜひネット通販などからお買い求め頂ければと思います。 このままだと……ラッキーの肉球によってはじける可能性が。  テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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