箱庭から水が溢れてきた時にいた、あの時の子
それからの後処理についてはドブに全部任せることにした。
ドラゴンについては、改めて俺たちの仲間になったことを話した。
マルグレットも再封印はできないと村の人へ強く説明してくれたので、反対する人はいなかった。いたところで本人が眠らないと言っているのでもう無理だろうが。
スイジュ国との同盟については、かなり融通をきかせてもらったようだが、俺はもうそこへタッチするのはやめた。あとの交渉はドブにすべて任せたが、向こうはラッキーとドモルテの話題を常にだしてきているらしい。
なにかやらかしたんだろうな。まぁ直接的な交渉はもうしないが、ラッキーたちの名前をドブが使うには問題ないだろう。
それとグリスは、もうしばらく女性と恋はしないといっていたが、なんとかドブに紹介するように言っておいた。今回の女性は無理だと話していたが、穴埋めはすると約束してもらったのでよしとしよう。
雪結晶の匂いを追ってドブにたどり着いたのは、わざと手がかりを残していたらしい。ドブにも監視がいる恐れがあって自分からはなかなか動けなかったようだ。
俺が来ることも想定していたが、もう少し時間がかかると思っていたようで準備が間に合わなかったと言われたが、そんなのは俺の方の問題ではない。
そして、俺はもう一つの謎を解き明かすため箱庭へやってきていた。
最初ガーゴイルくんの封印を解こうと思っていたが、どうやら俺が思っていた以上に難しい封印なようだ。
なにか別の方法がありそうだということで、ドモルテを中心に解除方法を探ってもらっている。
俺は一人砂浜まできて、小舟に乗り込もうとすると、いつの間にかラッキーが来ていた。
『ロック、魚釣りか?』
「いや、アネサ村で箱庭から水が溢れてきただろ。あの時にいた女の子を思い出したんだ」
『さては……船の中にロックの愛人が?』
「違うわ! むしろ連れ込んで忘れている方がおかしいだろ」
『これだけの人数の目をかいくぐって連れ込むほうが難しいか。それに女性なら沢山いるしな』
「チャドの船の中で不思議な絵を見かけたのを思い出したんだ」
『絵が何か関係あるのか? ロックそれは疲れすぎてるんじゃないか? 働きすぎだぞ。モフモフしていいから少し休んだ方がいいぞ』
「あぁ、俺もそうだと思うんだけど念のために確認しないと」
『わかった。私も行こう』
「パパーお船の探検、私も行く!」
いつから聞いていたのか、パトラが俺の身体に抱き着くと、そのままよじ登ってきた。
「危険はないと思うけど、パトラ大丈夫か?」
「お船さんは大丈夫でしょ? ずっと箱庭の中に浮いてたよー」
「それもそうか」
船がここに来てからもうだいぶ日にちがたっている。
その間に特に問題がなかったことを考えると、それほど危険なことはないだろう。
俺たちはそのまま小舟に乗り大型船のところまでやってきた。
足元が不安定だったが、ラッキーに乗ってひとっ飛びで甲板へとジャンプした。
『意外と広いんだな』
「あぁ、ラッキーが入れるくらいはあるな」
早速、絵を飾った部屋までいくと、絵の中の少女は前には持っていなかった空の空き瓶を持って満面の笑みを浮かべていた。
あの空き瓶は……こないだ渡した回復薬のものだった。
「パパー不思議な絵だね。なんか見ていると胸がキュンキュンするー」
『すごいぞロック。この絵を見ているとなんか心が癒される』
「あぁ俺もこの絵には魅了されてしまっているのがわかる。ただこの絵がいったいなんなのか。害はなさそうだけど……」
絵を取り外して見てみると、裏にはきまぐれの女神像と書かれていた。
さらにその下に、うっすらとかすれてしまっていたが、『この絵が君に幸せをもたらせてくれることを祈る』と書かれていた。
誰かが何か特別な願いを込めて贈った絵のようだ。
「君と話したいから絵からでてきてくれないか?」
俺は真剣に絵に話しかける。
『ぷぷっ。ロック、いくらロックが特別でも絵は話してくれないと思うぞ』
「パパー絵は飾っておくものですよー」
「でも、ほらこないだコロン村の火事を消すのにでてきてくれたのが彼女だと思うんだ」
『何を言っているんだ? 大丈夫か?』
「火を消すのにですか?」
「コロン村で怪我した人たちに回復薬を渡そうとしている時に、この絵に描かれた小さな女の子がいたじゃないか」
『ロック……働きすぎだ』
「パパーお疲れですか? おねんね大事だよー」
おかしい。あの時ラッキーは近くにいたと思っていたんだけど。
ただ、出て来たくない以上、無理に引っ張り出すこともできない。
絵の前に色々な味付けをした甘い系の回復薬5本をお供えしておく。
きまぐれの女神のきまぐれがあれば、また出てきてくれるだろう。その時にでもみんなに紹介すればいいか。
『ロック―船の中探検してみたい!』
「パパー行くよー!」
「わかったよ」
部屋から出る時、もう一度気まぐれの女神の絵を見ると、絵から飛び出した小さな子供が手に回復薬を抱えて笑っていた。
「ラッキー、パトラほら!」
『どうした?』
「なんですかー? なにもいないですよー?」
もう一度見ると彼女の姿は消えてしまっていた。絵の中にはいたずらっ子の顔をした少女が描かれていた。
『ロックは疲れているからな』
「パパー休むの大切。いい子いい子してあげるからおねんねだよー」
「そうだな。でも休む前に、まずは二人と一緒に船を探検しようか」
ラッキーのモフモフを堪能しながら、パトラと手を繋ぎ船内を散策する。
ドラゴンにフェンリル……たくさんの仲間がいるんだから、絵の中に描かれた仲間がいてもいいだろう。
次はどんな仲間と出会えるのか楽しみだ。
俺たちはまた新たな仲間との出会いを求めて旅立つことにした。
幼馴染のS級パーティーから追放された聖獣使い。万能支援魔法と仲間を増やして最強へ!
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小説版3巻とあわせてよろしくお願いします。
いよいよ明日漫画版が発売になります。
いつもありがとうございます。
ロック「俺たちの旅はまだまだこれからだ」
ラッキー『次はどこへ行くんだ?』
パトラ「次は……新しい夢へ向かうのかも」
シャノン「どこでもみんなと一緒なら!」
ガーゴイルくん「僕の封印も解いて欲しいです」
紅桜「俺たちの故郷にも戻りたい」
エミル「みなさんがいくところなら」
ドモルテ「まだ見ぬ魔法を見つけたいわ」
ララ「ドモルテ様最高ですっ」
メロウ「どこにいたって私たちの冒険は終わらないわ」
絵の女の子「次はあなたの夢の中かも……」
オレンジアントたち「!!」
グリズ「俺も一緒にいくからな」
ドブ「権力関係は私がなんとかしておきますから」