グリズさんの恋心をもて遊ぶなんて許せない
俺が家から出るとパトラがラッキーに乗って箱庭にからでてきた。
「グリズの友達だと言っていた行商人の匂いを追えるか?」
『あいよ』
俺はラッキーに掴まり拳を思いっきり強く握る。ラッキーは街の中を風のように疾走してくれた。今日は幸いにも月がでていなかった。隠密活動するにはちょうどいい。
「パパーグリズさんの恋心をもて遊ぶなんて許せないですー」
「そうだな。今回のはやり方が悪かった。正攻法じゃない方法でいいなら、俺にも考えがあることを伝えないと。パトラ手伝ってくれるかい?」
「もちろんだよー」
最初についたのは、俺たちと一緒にコロン村へ行った行商人のところだった。
『ロック……もう遅かった』
行商人の家は街の外れにあり、近くに馬車が止められ、庭には馬が4頭繋がれていたが、家の中はすでに空になっていた。
「ラッキー臭いを追えるか?」
『ここで風魔法を使ったのか、臭いがこの場所を中心に拡散されている。多分私がいることを知っている奴だろう』
「他の匂いは追えるか?」
『大丈夫だ。雪結石の方を追える』
やっぱりどうやら顔見知りらしい。これをやった奴は俺たちがここに来るのを知っていたのだろう。
「パパー、落ち着いて。大丈夫だよ」
パトラが俺のお腹に抱き着き、上目遣いで心配してきた。
パトラ可愛い。
いや、今はパトラを愛でてる場合ではない。もう一度ラッキーに乗り、街の中を進んで行くと、今度は貴族の屋敷へとやってきた。
周りを囲む塀を乗り越え、そのまま進んで行くと、大きな屋敷が見えてきた。2階の1部屋だけ明かりがついている。
「ラッキー」
『あいよ』
ラッキーがジャンプするのにあわせて、俺とパトラはベランダへと静かに飛び移った。
そのままパトラが鍵を開けようとするが、ゆっくりと首を振る。
「パパー鍵開いているみたい」
俺とパトラがゆっくりと扉を開けるとそこには彼が笑いながらたっていた。