驚いてくれるといいなー(棒読み)。
村に戻ると、村長も一緒になって縛られて転がされていた。
あえてもう触れないようにしておこう。
俺たちが行くと、ちょうど見張りをしていたギーチンがいた。
「おぉーロックさん、この度はこの村を救ってくれてありがとうございました」
ギーチンは腰を折って深々と俺に頭を下げてくれた。
それにあわせてその場所にいた他の村人も頭を下げてくれる。
「いやいや、そんな気にしないでください。むしろ俺の方こそ相手の言うことを素直に信じて襲撃が夜だと勘違いしていましたから。申し訳ありません」
「それは違いますよ。このクソ村長が縄を外したせいで、スイジュ国の連中が予定を繰り上げて襲ってきたんです」
ギーチンは睨みつけるように村長を見ていた。
今までとまったく立場が逆転してしまったようだ。
「ロックさん、ギーチンにもう少し優しくするようにお願いしてもらえませんか? 私だってこの村のことを思ってやっていたんです。わざわざ陥れるためにやったわけじゃないんです」
「村長さんがあの時に俺の言うことを少しでも信じてくれていたら違っていたと思いますよ。見たいものしか見ないのが人間ですから仕方がない部分もあるとは思います。でも、襲撃が遅かったらきっと俺たちの責任を追及していたでしょうから。俺には何もできません」
「そんな……」
村長はそのままうなだれると、がっくりと頭をおろした。
村長のことはこのままギーチンたちに任せよう。
まぁ同族同士だから、それほど悪いことにはならないだろう。
「それでギーチンさん、スイジュ国の連中はどうするんだ?」
「ドラゴンが大暴れしたせいで、向こう側への通路が閉鎖されてしまったから、雪が溶けるのをまって山を越えて向こうに置いてくるつもりです。このまま殺してしまってもいいんですけどね。村も焼かれましたし」
「捨ててくるだけなら、俺とラッキーで行ってきましょうか? ラッキーのソリに乗せて運んでやってもいいですよ」
ラッキーの方を見ると尻尾をブンブンと振っている。
相当ソリを気に入っているようだ。
「お前ら! こうなったら戦争だ! スイジュ国が勢力をあげてこの村もこの国を潰してやる。スイジュ国には私よりすごい魔法使いが沢山いるんだからな!」
結局名前がわからない杖の男が騒いでいた。
まだ、スイジュ国の現状をしらないし文句を言いたくなるのはわかる。だが、ドラゴンが地面を焼き払い、巨大な穴をあけたあの状態では農産物を育てるのも大変だ。
今から戦争をするなんていう話になるわけがない。
しかもドラゴンを解放したのがこいつらだとわかれば……こいつらは生きてはいけないんじゃないだろうか。
「お前の国に向かってドラゴンが炎の弾を何発も打ち込んでいたけど、あれじゃあ農作物も育てられないだろうな」
俺はあえて、聞こえるか聞こえないかくらいの声でぼそっと独り言のようにつぶやいた。
「はぁ? なぜだ……結界がはってあったはずだろ!」
「あぁ、聞こえてたのか。あの結界、うちの仲間が興味を抱いたからお前たちが来る前に全部回収させてもらったんだ。悪いな。ほら地面にそんな結界とかあると気になるだろ」
「なっなにを言ってるんだ! ふざけるな。そんな簡単に破壊できる結界になんてなってないはずだ! しかも全部で6か所もあったんだぞ。それにドラゴンをコントロールするための呪いだって……」
ドラゴンの呪いについてはなんて説明するか……そう一瞬考えたが、わざわざ全部説明してやる必要はない。
「ドラゴンに呪いなんてかけたのか。だから、ドラゴンはスイジュ国の方に飛んで行ったんだな。相当あれは恨んでいたようだったからな。帰って他国に侵略している余裕があるといいな」
「なっ……嘘だろ!?」
「スイジュ国はどうやって始祖の魔人の魔法を使っているんだ?」
「始祖の魔人? お前は何を言っているんだ?」
それからしばらく質問したが、そいつは本当に何も知らないようだった。
これ以上情報を得られないとなると、さてどこまで脅しておくのがいいだろうか。
うん、逆恨みされるのも面倒だから、二度と手をだしたくなくなるくらい脅しておけばいいか。
「ドモルテ悪いがでてきて、こいつらに力の差を教えてやってもらってもいいか?」
箱庭からニコニコとしてドモルテがでてくる。
「もちろんいいわ。さてなんの魔法がいいかな?」
「ふん。こんな女に何ができるって言うんだ。こいつなら先ほどの二人の方がまだ怖いわ! 俺たちはスイジュ国でも選ばれた魔法使いなんだぞ」
可哀想に……知らないというのは本当に罪だ。
知らないことを知ろうとしなければ、いつまでも変わることはできない。
「そう。スイジュ国ってとても強い魔法を使うんだね。じゃあ私が少し魔法を使っても防御くらい余裕だね?」
「ドモルテ、こういう奴らには現実をしっかり教えてやろう。山頂の見晴らしがいいところで教えてやった方がよさそうだな」
「あぁ~あなたち本当に可哀想にね。怒らしちゃいけない人っているのに」
「ふん。お前らくらいがいくら魔法を使ったところで俺たちの国には傷一つつけられないだろうな。むしろ恥をかいて終わるくらいならやめたほうがいいんじゃないか? それよりもドラゴンの方が問題だ」
「そうだな。俺たちじゃ相手にならないかもしれないな」
「ロックさん、俺もついて行っていいか? こいつらが向こうに帰るのを見届けたいんだ」
「そうだな。ギーチンにはきちんと見届けてもらった方がいいかもな。ラッキー何往復かすることになるけどいいか?」
『いいぞ。私は犬じゃないけどな、そりを引いてやろうじゃないか』
ラッキーがブンブンと尻尾を振っている。相当好きになったな。
もっとラッキーと遊んでやらないとな。
それから、スイジュ国の連中とギーチン、ついでに村長も連れて山頂へと向かった。
さて、それじゃあ少し力を見せてやろう。
驚いてくれるといいなー(棒読み)。