この世界を幸せにしようとした唯一の魔王
「ドモルテは知っているのか?」
「聞いたことがあるわ。お人よしで困った人間に自分の鱗を与えてはその場から去って行く変わったドラゴンがいるって。いつも自分の鱗をはがして血だらけになっているから、その血みどろの姿が可哀想でせめて名前は可愛い紅桜って名前がつけられたって。ある日を境に目撃情報がなくなったと聞いてたんだけどそういうわけだったんっだ」
ドラゴンなのにめっちゃくちゃいい奴だった。
さっきの話もどこまで信じていいのかわからなくなる。
『ばっバカな! あれはドラゴンだとバレないようにやってたはずだ! なぜバレたんだ』
紅桜の鱗がさらに赤くなる。相当恥ずかしい過去のようだ。
最初に脅してきた印象とだいぶ違ってきていた。
その場にいた全員が苦笑いしながら挨拶をする。
「なにはともあれ、よろしくな紅桜」
『あぁ、こちらこそよろしく頼む。まずはガーゴイルの封印を解かないとだな』
「ガーゴイルくんの封印を?」
ガーゴイルくんの表情が陰る。
「僕は、このままでいいですよ。封印を解いたらなにか良くないことが起こりそうな気がするし」
『いいのか? かつてのお前なら俺やラッキーさんくらいの力があるんだぞ。そもそも魔王だった頃の記憶とか本当にないのか?』
「先代魔王が死んでからはずっと魔王城で掃除しかしてなかったし、目が覚めた時にあり集めで作ったって言われてたから」
『あぁー噂が本当なら強すぎたから記憶と魔力を封印されたんだろうな。先代の魔王はきっと元魔王だって知っていたんだろな』
「前の僕はどういう人だったんですか?」
『そうだな。簡単に言えば要領が悪い。すぐに騙される。いいように使われる。魔物らしくない。でも最高に素敵な奴だった。俺はお前以上に熱くて優しくて人間以上に思いやりのある奴を見たことがない。ただ、一時暴走して変な名前をつけられていたけどな……』
「そうなんですね……僕の底には何か黒い物が渦巻いていて……ロックさんに封印されていると言われた時から、ずっと心配をしていたんです、封印を解いたら僕が僕じゃなくなるようで」
『大丈夫だ。俺が言うのもなんだが、お前は普通のガーゴイルじゃない。この世界を幸せにしようとした唯一の魔王だ。それに封印を解いてお前が暴れたところで俺とラッキーさんがいれば余裕で殺せる力がある』
「ありがとうございます。どうやったら封印を解けるんでしょうか?」
「一回俺とラッキーでやってみようか?」
「いいんですか?」
「ガーゴイルくんが望むならもちろんだよ」
「ありがとうございます」
ガーゴイルくんは不安と希望が混ざったような表情で、俺とラッキーの方を見てくる。
「ただ、まずは村の方を処理してこよう。ラッキーの故郷へ行くのも今すぐってわけじゃないし。紅桜はこの辺りの空を何度か回ってから箱庭の中に入ってくれ。スイジュ国にはどこかにドラゴンが飛び去ったというのを印象づけたい」
『わかった。それじゃあ早速行ってくる』
「他のみんなも箱庭へ、ラッキーは俺と一緒に村へ、ガーゴイルくんは悪いがまたマルグレットを運んでやってくれ。マルグレットにはラッキーに乗せるのは少し刺激が強そうだからな」
『あいよ』
「わかりました」
それから村へ戻って後処理をすることになった。
国を超えての問題を処理しなければいけない。
幼馴染のS級パーティーから追放された聖獣使い。万能支援魔法と仲間を増やして最強へ!
3巻が2021年12月24日(金)に発売になりました。
ガーゴイルくんとラッキーの秘密が徐々にあきらかに……⁉
【みてみんメンテナンス中のため画像は表示されません】
ラッキー『ガーゴイルくんが同じ出身だったなんて』
ガーゴイルくん「封印をとけば僕も……」
ラッキー『性格豹変したらどうしような。だって魔王だし』
ガーゴイルくん「ラッキーさんお茶持ってこい」
ラッキー『封印解かれる前に……』
ガーゴイルくん「ひぇ」