石の魔人? えっ……
『どれだけ人間がひどいかわかっただろ? だからお前も使われているだけなんだよ』
ドラゴンはラッキーに話を振るが、途中で飽きたのかラッキーは欠伸をしていた。
『ドラゴン……お前、自分で気がついていないのか? お前は裏切られても人間のことが大好きじゃないか』
『そんなわけない。俺はドラゴンだぞ! 人間なんて簡単に殺せる』
『パトラ、ドラゴンのおじさんが訓練をつけてくれるって』
「やったーです!」
『バカ、お前こんな子供と訓練できるわけが……痛いっ』
パトラの容赦ない回し蹴りがドラゴンの顔を蹴り上げた。あれは痛い……。
『この、調子に乗るなよ。俺は世界最強種の一角のドラゴンなんだからな』
「みんなーいくよー!」
武器を持ったオレンジアントたちがドラゴンに挑みだした。
あれはもう止まらないな。ラッキーも尻尾をパタパタやって近くで見ているし大丈夫だろう。
それよりも、俺の方はそろそろ村を襲った奴らを対応しなければいけない。
ドラゴンへの危険度は一気に下がったし、こっちはほっといていい。
「シャノン、メロウ、スイジュ国の奴は大丈夫なんだよな?」
「全員縛り上げて下に置いていますよ。年増って言われたのでシャノンさんと一緒にボコボコにしてやろうかと思ったんですけどね」
「本当ですよね。でも残党がいたので少しは憂さ晴らしができましたけど」
「生きているのか?」
「もちろんですよ。でもメロウさんのおかげで生きているのを後悔するくらいまでは追い込めましたけど」
「もうシャノンさんったら。少し話し盛りすぎですよ。フフフ」
この二人相手にした奴らが少し可哀想になってくる。
絶対に年齢については触れないように再度心の中で決心した。
スイジュ国の連中は縛ってあるならとりあえずは大丈夫だろう。
仮に縛ってなくても、多分心を折られていそうだ。
「村の人たちは大丈夫なのか?」
「大丈夫です。村長以外は全員無事です、ギーチンさんたちが手分けして確認してくれているので問題ないと思います。怪我した人たちもロックさんの回復薬で回復できましたし」
とりあえず問題はひと段落したようで良かった。
あとは……ドラゴンとスイジュ国の連中をどうするかだな。
今回のことがあった以上、ドラゴンをここで眠らせるわけにはいかないし、スイジュ国の連中はできるだけ穏便に返したい。ただ、そうすんなりいってくれるかだな……。
「パパードラゴンさん強くて適わないですー」
パトラたちが走って俺に抱き着いてきた。そもそも勝てる相手だと思っていたのかとツッコミをいれたくなる。ドラゴン相手ではそう簡単にはいかない。
いくら眠っていたとはいえ……ドラゴンの方を見ると余裕なフリをしているが、久しぶりに運動したせいかハァハァと肩で息をしていた。いくら最強種とはいっても、手加減しながらパトラたちを相手するのは疲れるだろう。
「良かったな遊んでもらえて」
「うん。楽しかった。ドラゴンさんの爪ね、こーーーんなに大きいんだよ!」
パトラは少しおおげさに両手を広げてアピールしてくる。
表現の仕方が子供らしくてすごく可愛かった。パトラに続いて他のオレンジアントたちも大きく手を伸ばして表現してくるので、全員の頭を優しくなでてやる。
パトラの話を聞いていると、ガーゴイルくんがマルグレットを連れて飛んで戻ってきた。
「ロックさんただ今戻りました。スイジュ国の奴らは殺さずに全員しばっておきました。冷たい雪の上に放置してありますが、まぁ少しお仕置きも必要でしょ」
「ありがとう、さっきシャノンたちからも聞いたよ」
「報告済みでしたか」
「いや、教えてもらえて助かるよ」
お姫様抱っこで空を飛んできたマルグレットはガーゴイルくんに抱き着いたまま降りようとせずに俺たちに話しかけてきた。
さすがお姫様抱っこのガーゴイルくんだ。
お年寄りからも大人気のようだ。
「ヒャッハハ、まさか本当に助けられるとは思わなかったよ。ドラゴンが暴れていないってことは仲間にしたのかい?」
「いや、自由が好きらしくて……」
『ちょっと待て、なんでここに石の魔人がいるんだ?』
ドラゴンは俺の顔とガーゴイルくんを見ながら驚いているが、石の魔人?