ドラゴンの過去1
かつてドラゴン族は人が到底到達できない、人類から見たら最果ての地で生活していた。
俺もその場所で生まれ育った。
そこはドラゴンや上位種族だけが住んでいる場所だった。まだ人間に犯されていない弱肉強食の世界。
危険と隣り合わせだが、力が全ての俺たちにはそれで満足だった。
当時、人間たちは俺たちの住処にやってくることはなく、俺たちにとって人間は伝説や口伝で聞くだけの存在だった。
『人間は小さい割に狡猾で優しくて、自己中心的で思いやりがある種族だ。そして非常に弱くて強い』
じいちゃんがよく謎かけのように人間のことを話していた。
何一つ理解できなかったけど、じいちゃんから人間の話を聞くのはすごく楽しかった。
俺たちからすれば、人間なんておとぎ話の世界の登場人物でしかなかった。俺たちの暮らす土地はそれだけ過酷な環境だったということでもある。
でもある日、俺たちの巣に散歩するかのように人間がやってきた。
じいちゃんもだいぶ驚いていた。
俺たちは別に人間などいたところで、小さくて餌にもならないので別に気にもしていなかったが、弱いと言われていた人間が俺たちの側で怖がりもせずに生活しだしたのは驚きだった。
好奇心旺盛だった俺は、その初めて出会った人間を常に遠巻きに見ていたんだ。
そいつは俺たちドラゴンが怖くないのか、10mを超えるような魚を捕まえては焼いて俺たちに振舞ったりしていた。今考えるとあいつを普通の人間と同列にしてはいけなかった。
俺たちが住んでいた場所には色々なドラゴン以外の種族もいて、揉めることも多かったが、そいつが来てからはなぜか他の種族とも仲良くできるようになっていった。
あそこにはいろいろな奴がいた。
この世界最速と言われるがロム族や、争いが嫌いで草ばかり食べているフウイヌム族という馬に似た魔物、獅子の仲間のバロン族、水草の中をプカプカ浮いているジェニー族、それ以外にもノッカー、ノーム、ヘビモス、リザードマン、石の魔人、フェンリル……数多くの魔物や種族がいた。
俺が知らない奴も含めたらどれだけいるのかもわからない。
世界中でもそこの魔物は最強に近い魔物が多く存在していた。
そこにいた魔物がのちに、この近くまできて魔王になったり、暴走して封印されたなんていう話もあった。
その頃はそんなことを知らないから、毎日森がなくなったり、山が吹き飛んだりしていたが、あの辺り一帯は自然の回復力も凄まじかった。吹き飛んだ山が翌日には2倍くらいの大きさであるなんてこともあった。
今考えれば、あそこの生物1匹でこの辺りの人間を絶滅させることができる。
そんな場所に人間が一人で入ってこれるわけはなかったのに、そいつは散歩でもするかのようにやってきて、誰にも殺されずに生き延びた。
最初は遠巻きに見ていただけだった俺たちも、魚や魔獣の肉などをもらっているうちに段々とコミュニケーションをとるようになっていった。
そいつはなぜか、俺たちの言葉を話して、俺たちの住処に新しい文化を持ち込んだ。
少しずつだったが殺し合い、奪い合う世界から共存する世界を手に入れたのだ。
俺たちのような意思をもつ魔物と意思を持たない魔物の線引きがなされ、意思を持つ魔物同士で協力するなんてこともあった。
他の異種族と仲良くなるってことは、思った以上にハードルは高かったし、言葉が通じないことで揉めることも多かったが、それでも、知らない魔物と協力できることや仲良くなることは俺たちの世界を広げてくれて楽しかった。
俺たちはその男がいる生活に段々となれ、いるのが当たり前になっていった。
幼馴染のS級パーティーから追放された聖獣使い。万能支援魔法と仲間を増やして最強へ!
いよいよ明日、3巻が2021年12月24日(金)に発売になります。
今回は、あとがきでラッキーの名前の由来について触れています。
実はラッキーだけには読者の方へ特別な思いが込められていたんです。
その特別な思いとは……。
ぜひあとがきでご確認ください。
クリスマスイブにあなたのお気に入りの書店さんからご購入お願いします。
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ロック「1巻で自分で言ってたぞ」
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