アホすぎたロック……
「お兄ちゃんお願い! 僕に力を貸して」
悩んでいる暇はない。それに今は雪魔法を強化できるのはありがたい。
それに……もし仲間になったとしてもこの村に残るという選択肢だってある。
【氷雪の姫が仲間になりました。氷雪の姫の固定フィールド雪山が箱庭に追加されます】
「すごい。本当に力が溢れてくる。ラッキーさん、さっきと同じ魔法を燃えてる森に放ってください」
『いいのか』
「任せてください」
ラッキーが風魔法を放つと、エミルがそれに合わせる。
「アイススターダスト」
ラッキーの魔法に被せるようにエミルが放った氷魔法は燃え盛る森を冷却消火していく。
激しく燃えていた森が嘘のように鎮火してしまった。
効果は絶大だ。これなら……。
「ロック、いったいこれはどうしたんだ⁉ ドラゴンがなぜ解放されているんだ」
氷る森を見ているとドモルテが慌ててやってきた。今日は石を回収しにいくと行っていたが、ドラゴンが暴れだしたことに気が付き戻ってきたらしい。
「ドラゴンの封印とけちゃった。テヘッ」
ちょっと可愛く言ってみたら和んでくれるかと思ったが、全員からドン引きされた顔でみられたので、なにもなかったことにしよう。
うん。切りかえって大事だ。
「スイジュ国の連中のせいでドラゴンの封印が解かれた。マルグレットと村の方を頼みたい。俺たちはあそこで暴れているドラゴンを引き付ける」
「わかったわ。任せて」
『クククッ……ロックがアホすぎる』
一匹をのぞいて全員が聞かなかったことにしたようだ。
はっ……恥ずかしい。
ちょっとこの緊張感をほぐそうとしただけなのに。
ドモルテにマルグレットを渡すと、ドラゴンの方へ向きなおる。
最初、ドラゴンは俺たちを追って来たのかと思っていたが、俺たちに興味もないようで、ただ一匹で暴れている。やっぱり何か別のものと戦っているような気がする。
「ラッキーさん、次はドラゴンにお願いします」
「待て、エミル!」
俺の言葉の前にラッキーとエミルのあわせ技がドラゴンへ放たれる。威力は少し落ちているがドラゴンを怒らせるには十分だったようだ。俺たちを敵認定し、ギロリと睨みつけてくるとドスドスと地響きをさせながら向かってきた。
『ガルルルッ!』
「雪の精霊よ、私の呼びかけに答えて! 私は氷雪の姫、氷の魔法を統べる者。雹紋の桜」
鋭く尖った氷がサクラ吹雪のようにドラゴンの周りを舞っていく。
「エミル攻撃をするな! 今は村から離れて逃げるぞ!」
エミル単独の攻撃ではドラゴンにはほとんどダメージを与えることはできていないが、イライラさせるぐらいの効果はあるらしい。
ドラゴンが俺たちに激しい炎を吐きだしてきたが、ラッキーの俊敏さの方が上だった。
俺の言葉でラッキーは村から離れるように一気に移動する。
いくら強い魔法でも当たらなければ意味はない。
俺たちに攻撃が当たらないとわかると、ドラゴンは空を飛びながら追いかけてきた。大丈夫だ。うまく誘導できている。
「エミル怒らせすぎないように注意をこっちに向けるんだ」
「わかりました! 氷の刃!」
ドラゴンの翼にエミルの氷の刃が触れると大きく裂けた。どうやら翼の部分は非常に弱いらしい。
「エミル、注意を向けるだけって言ったのに」
「僕だって、翼があんなに弱いとは思わなかったんですよ」
『よくもやったなー!』
ドラゴンはスピードをあげて追いかけてきた。
「ラッキー頂上へ向かうんだ」
『あいよ』
ラッキーが逃げる中、ドラゴンはなぜか泣きべそをかき、文句を言いながら追いかけてくる。
『痛いよ。痛い。なんでこんなことをするの。僕は眠っていただけなのに。これもあいつらがいけないんだ。絶対復讐してやる』
ラッキーのスピードがさらに加速し雪が大きく舞い上がっていく
「エミル、しっかり捕まっていろよ」
「わかりました」
幼馴染のS級パーティーから追放された聖獣使い。万能支援魔法と仲間を増やして最強へ!
3巻が2021年12月24日(金)に発売になります。
実は……ここだけの話ですが、今回の見開きの絵はロックたちの温泉シーンとなっています。
ここのシャノンも可愛いんですが、パトラの顔がまったりーって感じで転さんの表現力の高さがすごいんです。ぜひ見て欲しいです。
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パトラ「お兄ちゃん、お姉ちゃん本予約お願いします」
オレンジアントE「!!」
パトラ「Eくん、表紙にでたいって話は今じゃないよー」
オレンジアントE「!!?」
パトラ「ガーゴイルくんをぜひ表紙にしてあげたい? 優しいなー」
ガーゴイルくんは表紙にはなれませんでしたが、挿絵で可愛く踊ってます。
ぜひ、ガーゴイルくんの勇姿をその目に!