洞窟の中にいたのは名前もわからないモブキャラだった。
ついに……3巻の書影が公開されました。
詳しくはあとがきで!
洞窟の中では何があってもいいように、ラッキーから下りて進むことにした。
俺、イバン、ラッキーの順番でできる限り音を立てないように急ぎながら進んで行く。
「イバン、何かあればラッキーが守ってくれるから。心配しなくていいからね」
イバンは無言のまま頷く。大丈夫だ。最初の頃よりもだいぶ落ち着いているように見える。
洞窟の中を進んでいくと奥からさらに怒鳴り声が聞こえてきた。
「このまま意地を張るようなら、村人を一人ずつ殺すぞ!」
「おばあちゃんが危ない」
イバンが誰に言うわけでもなく呟くように言う。
今にも飛び出したいのを我慢しているようだ。
本当なら奇襲をしたかったが、イバンの気持ちを汲むとそうも言っていられない。
それに気配からして、ここにはそれほどの数の兵士はいないようだ。
これなら奇襲じゃなくてもいけそうだ。もうだいぶ近づいている。
「静かに行くのはなしだ。ラッキー頼む」
『あいよ』
急いでドラゴンが封印された場所まで行くと、ちょうどマルグレットの真上に剣が振り上げられていた。結果的にゆっくり行っていたら間に合わなかったかもしれない。
「やめろ!」
「おばあちゃん!」
そこにはマルグレットと唖然として膝たちになっている村長、そして俺たちに気が付いた騎士の男がいた。
マルグレットはすでにどこか切られたのか、身体から出血している。
騎士の男は俺の顔を見ると、満面の笑みを浮かべマルグレットの頭へと剣を振り降ろした。
「こんなはずじゃなかったんだ。違うんだ。スイジュ国とは上手くやれていたんだ。お互いに成長していこうって、なんでこんなことに……」
村長はそのまま頭を抱えうずくまってしまっている。
まずはマルグレットを助けなければいけない。
「ハハハッ、残念だったな。こないだはお前にやられたが……!?」
「黙ってろ」
俺は一瞬で男との間合いをつめ顔面を思いっきり蹴り上げる。イバンはそのまま駆け寄るとマルグレットを庇うように抱きしめた。
「おばあちゃん、生きててよかった。血が……」
「ありがとうイバン。お前の本当の名前を……もう力を解放するんだ。弱いフリをする必要はない」
「おばあちゃん話しちゃダメだ。わかっているから。もう逃げるのはやめるから」
イバンの目から涙がこぼれ落ちると、目から落ちた涙はそのまま氷へと変わっていく。
彼から段々と膨大な魔力が溢れてくる。また昨日のように暴走しそうなほど大きな魔力がでてくるが、すぐに安定してきた。
イバンは泣きながらマルグレットを抱きしめている。
「私はいいから……逃げるんだよ。もう縛るものは何もないんだから」
マルグレットが優しくイバンの髪の毛をなでる横で、ドラゴンを封印していた水晶がガラガラと音を立てて崩れていった。
とっさに、マルグレット口に封を開けた回復薬の瓶を突っ込み、ラッキーの背中にマルグレットを乗せる。
『よくも……俺の眠りを邪魔したな。せっかく気持ちよく寝ていたのに……グルル……気持ち悪い』
ドラゴンの声が聞こえ身体を動かすと、洞窟が揺れ落石が始まった。
まずい! 村長とイバン、それに一発で気絶した騎士をラッキーの背中に投げるように乗せる。
「ラッキー!」
『あいよ』
俺が飛び乗ると同時に洞窟から走って逃げる。背後から洞窟が崩れてくる音が聞こえる。この落石でうまくドラゴンを封印できるだろうか?