グリズと楽しい談笑。いやないない(笑) 前振りにならないことを祈るだけだ。
「それでロック、ドラゴンは見たのか?」
「あぁ、しっかりアネサ村の洞窟に封印されていたよ。だけど、それももうすぐ封印が解かれるって話らしいよ」
グリズはお茶と一緒にだされたお菓子を手に持っていたが、それをそのまま地面に落としてきょとんといった顔をしている。大丈夫だろうか。
落ちたお菓子に息を吹きかけると、そのまま口に運んだ。
裕福なおぼっちゃまがするような態度とは思えない。
「3秒ルールか?」
「思わず、普段やらない行動をとっちまったじゃないか。冗談は休みやすみ言えよ。ドラゴンが封印されているだけで問題なんだぞ。それが解放されるなんて……いつだ!? いつ解放されるんだ?」
先ほどの表情とは違い、今度は一転元気になった。
本当に騒がしい奴だ。
「多分、今夜の可能性が高いかな」
グリズが目頭を押さえる。頭痛でもしてるのだろうか。
たしかに少し太りすぎているし、友人として健康が心配になってくる。
「あぁーなんだ。ロックの行く先にはトラブルしかないのか?」
「なんて失礼なことを言うんだ。今回はグリズの付き添いで来たんだから、グリズが持っているんだと思うぞ」
まったく、俺をトラブルメーカーのように言われても困ってしまう。
最近、少し……結構……あれ? 本当にトラブルばかりじゃないか。
俺のせいなのか……? いや、俺が原因のトラブルは少なかったはずだ。
ただ、首を突っ込んでいるのは俺の気がする。
いや、これ以上は考えるのをやめよう。
「まぁ、本当に一緒にいると退屈はしなさそうだよ」
「今思い出していたんだけど、たしかにトラブルに巻き込まれすぎている気がするぞ。少し帰ったらゆっくりしよう」
「ハハハッ! ほら、言わんこっちゃないじゃないか。それでなんでドラゴンの封印が解かれるんだ?」
俺は今までのことを説明してやった。
なんだか最近説明ばかりだな。
グリズはミントティーを口に含んでゆっくり飲みこみ、大きくため息をつく。
「久しぶりに聞くんじゃないって思ったぞ。いや、最近も同じことを言った覚えがあるな」
「あぁ、こないだの時も言ってたな」
「それでどうするんだ? 夕方にはまた戻るんだろ?」
「あぁそのつもりだ。みすみす襲われるとわかっている村を放置はできないからな。それにドラゴンのことが心配だろ」
「たしかに、ドラゴンが暴れ出したらこの国なんてあっという間に……仲間にしたいとか思っていないよな?」
「もちろんだよ。ドラゴンはさすがに無理だろ」
「ならいいけど……フェンリルにドラゴンなんて言ったら、この世界でもトップクラスの戦力を一人が独占するようなものだからな。いくら従魔扱いとは言っても貴族が放っておかなくなるから、気をつけろよ。それでなくも規格外なんだから」
「ドモルテにも規格外って言われたんだけど、そんなにか?」
「……まさか無自覚なのか? それはないだろう。ラッキーだけでも十分戦力としては問題だからな。それにドモルテは常闇の王リッチだろ……ドモルテ!?」
「どうした?」
グリズはいきなり立ち上がると、ゆっくりと壁際へと俺を見たまま下がっていく。
「ロック……正直に話してくれ」
「なにをだ?」
「ドモルテって……まさか、そのまさかだけど……大賢者ドモルテなんてことはないよな? たまたま名前が一緒っていうだけだよな?」
「あれ、言ってなかったか? ドモルテは大賢者ドモルテだよ。王都の墓の下で出会ったんだ」
グリズが石のように固まってしまった。大丈夫だろうか?
呼吸すらとまっている。
「おーい。大丈夫か?」
「お前、そういうのは先に言っておくものだぞ。大賢者ドモルテにもその隠れ信者は沢山いるんだからな。もし本当に生き返ったなんていうのが知れ渡ったら……信者が間違いなく襲ってくるぞ」
「俺たちをか?」
「あぁ……そうだな。現段階でも、ロックの戦力を上回る奴は、そうそういないだろうな。ただ、数の力は暴力だからな。敵対しないことを祈ってるよ」
「いやいや、なんで敵対することを前提のような話し方なんだよ。俺たちはまったり安全にまったり旅をしているだけで、そんな危ないことには巻き込まれないからな」
「そうだな……こんなことがそう何回もあるわけないよな。ハハハッ……」
「ないない……ハハハッ」
俺たちは二人で笑いあっていたが、グリズの言っていることが現実に……そんなこと起こるわけがない。それに信者なら仲良くなれるはずだ。襲われるなんてことはない。ないと思いたい。
「次、なにか問題起こったらまた巻き込むからな」
「頼むから辞めてくれ。俺はまだ死にたくない」
「大丈夫だ。グリズならできる。それに……雪結石無料であげたし」
「なんて姑息な! 友達の恋は応援するんじゃなかったのか?」
「あぁ困った時はお互い様だからな」
「タダより怖い物はなかったか」
「まぁ実際にそんなことは起きないだろうから大丈夫だよ。それよりも、隣国スイジュ国についてどう思う?」
「かなり面倒だな……ただ、力を見せておけばそう簡単には攻めてはこれなくなると思うぞ。あそこの魔法使いって意外と力の差に敏感なんだ。あそこの国は魔法の力次第で就職も何もかも変わる国だからな」
「そんなになのか?」
「まぁ噂だけどな。魔法の才能至上主義の国だから、それ以外では評価されにくいらしい」
「それにしては、たいして魔法の腕はなかったぞ」
「それはロックが規格外だから……ドモルテと見比べたらたいがいの魔法使いは格下だからな」
ただ、命令系統が分かれていたのが理由がなんとなくわかった。
基本魔法がすべての国だから、王国を守る騎士だとしても、魔法使いからすれば格下の扱いになっているのだろう。魔法が使えることが特別だとしても、一人しか来ていない時点でたいした数はいないのか? それとも捨て駒としてよこされたのだろうか?
アネサ村にはそれほど人もいなかったから、たしかにあの戦力であれば本来俺たちに見つからなければ問題なく任務を遂行もできたか。
「ドモルテがいれば大丈夫だとは思いたいが、でも違う常識で生きている人たちだと何がおこるかわからないからな」
「まぁ気をつけろ。ドラゴンへの対策は考えているのか?」
「ドラゴンは……無理だろ。対策何てとれるわけがない。できるだけ被害を少なくしたいとは思うけど、これはスイジュ国側に逃がすわけにもいかないし、頭が痛いよ」
「ロックは優しいからな」
自分のいる国が被害がでて欲しくないのはもちろんだが、だからと言って関係のないスイジュ国の人たちにも被害がでて欲しいかといわれればそういうわけではない。
一部の人間がやったからといって、国単位で被害を受けなければいけないといえば、必ずしもそうだとは思わない。
負の連鎖になる前にできる限りその連鎖は断ち切った方がいい。
「まぁなんとかなるだろう」
「ハハハッ! ドラゴン相手になんとかなるなんて言えるのはロックくらいだからな。普通なら仮に噂だとしても今頃避難して逃げてるよ」
「まぁ、それもそうか」
俺は、もう一度ミントのお茶を飲む。少し冷めてきていたが、口の中に爽やかな香りが広がって、とても清々しい。これが終わったら絶対にゆっくりして、のんびりミントでも育てるんだ。
少しゆっくりしていると激しくドアのノックする音がした。
俺たちが返事をする前に扉が激しく開けられた。
シャノンが肩で息をしながら現れた。
「大変です! アネサ村で何かあったみたいです!」
シャノンの顔には悲愴感があふれていた。
もう復習はすみました?
聖獣使い漫画版、第3話まもなく配信終了!
8月5日(木) 午前11時から第4話更新予定です!
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直後に呼び出されることになるラッキー。
今日は静かですねは言ってはいけない。