サプライズプレゼントのコート
箱を開けるとそこにはメッセージカードとパトラが作った新しい防寒具が入っていた。
新しいコートに手袋がおいてある。
シャノンやメロウが着ていたのと同じようなコーディネートになっており、さりげなくおそろいだ。
メッセージカードを開けると中にはこんなことが書いてあった。
『親愛なるパパへ
いつも、ありがとう。
パパのおかげでみんなと楽しく生活ができています。
今日はパパのために特別なコートを作りました。
パトラたちの糸にラッキーちゃんの毛、シエルの羽根などを使って強化と軽量がされています。
メロウさん速乾性の技術も使っているので、水に濡れても平気です。
パパが気に入ってくれると嬉しいな。
パパを大好きなみんなより愛をこめて』
ほんの数秒前に隠れてるのを見つけてやろうなんて考えていた自分自身を殴ってやりたい。
いつのまにかパトラが字を覚えていたのにもビックリしたが、子供の成長というのは早いものだ。
思わず嬉し泣きそうになるが、それよりもパトラたちを探さなければいけない。
本当にどこにいるのだろう。
俺がそのまま庭にでると、パトラたちが待っていたくれた。
「パパーサプライズプレゼントです。喜んでくれました?」
「パトラちゃんが色々計画してくれたんですよ。ロックさんに秘密でプレゼントを贈りたいって。普通に渡すよりも今回は少し趣向をこらしてみました」
「ありがとうパトラ、みんな、大切に使わせてもらうよ」
「パパー着て見て!」
さっそく新しい防寒具を着て見ると、想像以上に軽く、着ていてストレスがまったくなかった。
どうしても、寒さ対策で着込んでしまったりすると多少の動きにくさがでたりするのだが、このコートはまったくそんなことがなかった。
「今まではパトラちゃんの糸をメインで使っていたんですけど、そこにシエルちゃんの羽根をまぜたところ、重さが軽くなる魔法が付与されたんです。私も全然知らなかったんですけど、スカイバードが天高く飛べるのはこの羽の効果みたいなんですよ」
予想外のところでシエルのすごさを教えてもらった。
シエルは俺の肩まで飛んでくると、愛情を込めて身体をすりよせる。
「最近、シエルは大活躍だな」
シエルはえへんと言わんばかりに胸をはった。
首筋を優しくなでてやると、くすぐったそうにしている。
「パパー似合ってるよー」
『ロック、イケメンだな』
「ロックさん、素敵ですよ」
「ご主人様、いい感じです」
「みんなありがとう! なかなかゆっくりできていなかったけど、今日は思いっきり遊ぼう! それじゃあ、さっそくこの防寒着を試すのに、外に遊びに行こう!」
「いこうー!」
「おう!」
まさかこんなサプライズでプレゼントをもらえるとは思っていなかった。
他のメンバーともおそろいのようで、少し嬉しくなる。
ラッキー用の大きなそりを持って外にでると、改めてその大きさにビックリする。
「これってどうやって止まるつもりなんだ?」
『それは、大丈夫だろ。風魔法を使えば簡単に止まれるよ』
「よし、それじゃあ気を付けていってこいよ」
「ラッキーさん楽しんできてください」
ゆっくりと崖に向かってそりが傾いていく。
ラッキーの体重とこの大きなそり……ものすごいスピードがでそうだ。
『シャノンも一緒にいくぞ』
「えっ?」
今にも滑り出そうとしたところで、ラッキーがシャノンを前脚で抱え込む。
「いや、私は!? ダメですぅー!」
シャノンが一瞬で目の前から消えていった。
「あれは……シャノンさん可哀想に」
「メロウは大丈夫だったのか?」
「私は……全然平気でしたよ」
「じゃあもう1回乗るか? 次はパトラとかと……」
平気だと言っていたメロウの膝がガクガクと震えている。
あっ、これダメなやつだな。そっとしておいてやる。
「パパーパトラたちも滑ってくるねー」
「おう、行ってきな」
オレンジアントEの後ろには相棒のガーゴイルが座り、そのまま急加速で崖を落下していった。
みんな遊び方がアクティブだ。
シャノンたちは……ラッキーの乗ったそりはそのまま、猛スピードで森の中に入っていったが、森の木がどんどんなぎ倒されていく。
加減をしなかったのだろうな。
ラッキーは自分で走るのは速いが、こういう乗り物に乗ることは少ないので新鮮なのだろう。
「ご主人様、ラッキーさんとかこれが当たり前なんですか?」
「ん? まぁ当たり前ってわけじゃないけど、パトラとかはオレンジアントっていうダンジョンでもかなり強い魔物の子だし、ラッキーはフェンリルだからね。一般的な普通より少し過激なくらいじゃないかな」
「少し……基準がすでにいろいろ崩壊していそうですね」
「そんなこと言ったら、メロウだって人魚の女王だからね。なかなか個性があるわけだからね」
「否定はできないですが……リヴァイアサンのサンの強さがすごいと思っていた私からすれば、もう想像もできなかった世界です」
「その気持ちは少しわかるかな。俺も、こんなに世界が広いなんて思っていなかったから」
「まったくですね。生涯飽きずにすみそうです」
メロウはそのまま雪の上に座ると、すっくりと素敵な声で歌いだした。
その歌声は山々に響き渡り、空へと昇っていく。
俺たちがまったりしているとラッキーが尻尾をぶんぶんと振って戻ってきた。
「楽しかったか?」
『めっちゃ面白い! スピード感が違うんだ! あっロック! 森の奥で洞窟の中にあった黒い魔風穴があったんだけど、風魔法で散らしておいたほうがいいかな? 何回でも行ってくるからついでに散らしてくるぞ』
ラッキーは楽しそうにしているが、対照的にヘロヘロになってうなだれているシャノン背中に乗っていた。
「森の中に? あれは魔力の滞留で起こるっていっていたものだろ? なんで森の中に?」
そうそう魔力が滞留するなんてことは起こるはずがない。
この辺りの土地は何かおかしい。
もう一回行って散らしてもらうか。シャノンは……ラッキー次第だな。