ラッキーと山頂と雪山の景色
「ラッキー、ちょっと箱庭に行ってくるわ」
『そうか。箱庭の中は安全だからな。そんなに慌てなくてもいいんじゃないか』
なにかラッキーが怪しい。
ただ、外にいるだけなのに尻尾の振り具合がかなり激しい。
「ラッキーなにか俺に隠してないか?」
『かっ! 隠してなんかいないぞ! なぁロック、仲間っていうのは信頼が大切だろ』
「あぁそう思けど、信頼しすぎてダンジョンに置いて行かれたからな」
『それはまぁ相手が悪かったからな。だけど、パトラたちを疑うのか?』
「いや、疑ってはいないよ。だけど……ラッキー何を隠しているんだ! 白状しろー! そうしないと……ここだろ、ここが気持ちいいんだろー!」
雪山の山頂でラッキーに飛び掛かると、ラッキーの首筋を徹底的に撫でてやる。
ここが弱いのは知っているんだ。
『ロックー知らない。私は何も知らないんだ』
「本当に?」
『ロック、私は嘘をつかない。この目を見てくれ』
ラッキーの目が左右に揺れる。
「めちゃくちゃ挙動不審じゃないか!」
ラッキーの首筋をもう一回思いっきり撫でてやる。このモフモフめ!
これでもか!
『くっ、ロック~ついでにお腹周りも』
「諦めたな」
『いやー久しぶりにロックと二人きりだから楽しくてな』
ラッキーがモフモフしすぎてデレデレになってしまった。
「たしかにそうだな」
俺はゆっくりとラッキーの横に腰掛ける。
ここ最近は、箱庭の中でゆっくりしていることよりも、外にでていることの方が多くてラッキーとコミュニケーションをとれていなかった。
別に、今すぐの危機がここにあるわけじゃない。
ドラゴンの封印もスイジュ国への隠し通路も、優先するべきことなんて一つもない。
『ロック見てみろ、この景色』
ラッキーが連れてきてくれた山頂は、気持ちいいほど爽快な眺めだった。
「すごく世界は広いな」
『なんだ改まって』
「少し前の俺だったら、まさか冒険者ギルドのランクやダンジョンを攻略することとかに夢中になっていて、こんな美しい世界を知ることはなかったんだろうなって」
『私だって一緒だよ。そもそもあそこには誰も遊びに来てくれなかったからな』
「ラッキーはどうやってあそこのダンジョンへいくことになったの?」
『あそこへは……』
今まであまりラッキーがどうしてあの場所にいたのかをゆっくりと聞いたことはなかった。ダンジョンで会った時、ラッキーは私みたいに外にでたい奴は沢山いるはずだ。と言っていた覚えがある。
もしかしたら何か特別な理由が……。
ラッキーの詳しい話を聞こうとしていたところ、箱庭からガーゴイルくんがでてきた。
「ロックさん、ただいま戻りました」
「ガーゴイルくん戻ってくるの早くないか?」
「直線距離ではあっという間でしたので。グリズさんから伝言です。また、面白いことにクビを突っ込んでいるようだけど、戻ったらちゃんと話を聞かせろって言ってましたよ」
「別に面白いことはないけどな」
「それと、雪結石探しに行ってくれてありがとうだそうです」
「ほんとに……」
雪結石を買いに来ただけのつもりが……水晶の中に閉じ込められたドラゴンを見たり、隣国の商人に出会ったり……不思議な出来事ばかりに出会う。
「それと、パトラちゃんが箱庭の中にちょっと来て欲しいって言ってましたよ」
『ロック、箱庭へ行こう』
「箱庭よりもラッキーの話を聞きたかったんだけど」
『それはあとでゆっくり話してやるから』
「そうか。じゃあ箱庭に行くか」
俺が念じると箱庭の中に一瞬で転移した。
だが、箱庭の中には誰の姿もなかった。
いつの間に作ったのか、ラッキー用の大きなそりだけは置かれていた。
小屋の中にでもいるのだろうか?
「みんなどこに行ったんだろうな?」
『小屋の中じゃないか?』
「ガーゴイルくん、みんなどこにいるって?」
「小屋の中だと思います」
「パトラー、シャノン? メロウ、大丈夫か?」
小屋の中に入ると、小屋の中にはスッキリ片付いており、テーブルの上に箱が置かれている。
いつもならシエルは外にいることが多いのに……シエルもいないとなると、さてはビックリ箱だな。
地下室か、船の中にでも隠れているのだろう。
箱庭もだいぶ広くなったからな。隠れる場所はたくさんある。
雪山で遊びたいって言っていたのに、かくれんぼのつもりなんだろうか。
さて、さて、どこに隠れているのかな?
あえて、机の上の箱には触れずに地下の方を確認してみる。
『ロック、机の上になにか置いてあるぞ』
ラッキーがわざとらしく声をかけてきた。
「あぁ、箱も気になるんだけどパトラたちがいないからさ」
『これをあけてみたらいいんじゃないか』
なるほど、やっぱりラッキーもグルだったということだろう。
あえてのってやろうじゃないか。
「そうだな。箱を開けてみるか」
俺が箱をあけると、そこには……。




